【問】 取得時効及び抵当権並びに物権変動に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1  Aは、Bの所有する土地を自己の所有地であると過失なく信じ、所有の意思をもって平穏かつ公然と占有を開始し、10年が経過した。その後Bがその土地をCに譲渡し登記を移転した場合であっても、Aは、この土地の所有権の時効取得をCに対抗できる。

2  抵当権に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的となっている建物を使用する者は、当該建物の所有権を競売により取得した買受人に対して、一定期間内に建物を明け渡さなければならないが、当該買受人に対して、敷金返還請求権を行使することができる。

3 AとBが甲土地を共同相続しその登記がなされた後、Aが、相続を放棄したが、自己の法定相続分をCに売却して登記を移転した場合、Bは登記なくしてCに対してAの相続分の取得を対抗することができる。

4  Aは、Bの所有する土地を自己の所有地であると過失なく信じ、所有の意思をもって、平穏かつ公然と占有を開始し6年経過した時点で死亡し、Dが相続した場合、Dはこの土地がBの所有地であることを知っていたときには、その後4年間占有を続けても、この土地の所有権を時効取得することはできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】   正解    3

l  誤り。Aの取得時効が10年の経過によって完成した後にBがその土地をC(第三者)譲渡したときは、AとC(第三者)の対抗関係は登記で決することになる。したがって、Aは登記を備えたCに対抗することはできない。

2  誤り。賃貸物件を競売により取得した買受人は、前所有者の敷金返還義務を引き継がないとされている(平成16年改正)。

3 正しい。Aは相続を放棄した時点で土地の持分権はないので無権利である。Aから買い受けたCも無権利者である。その事をもって、Bは登記なしにCに対しAの相続分の取得を対抗することができる(判例)。

4  誤り。相続人は,被相続人の権利義務を承継する。占有を承継したDは悪意あっても前主(被相続人)の善意無過失の占有を主張することができる。したがって、Dはその後4年間占有を続ければ時効取得を主張することができる。