【問】 Aは、Bに対する貸付金債権の担保のために、当該貸付金債権額にほぼ見合う評価額を有するB所有の更地である甲土地に抵当権を設定し、その旨の登記をした。その後、Bはこの土地上に乙建物を築造し、自己所有とした。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

1 Aは、Bに対し、乙建物の築造行為は、甲土地に対するAの抵当権を侵害する行為であるとして、乙建物の収去を求めることができる。

2 Bが、甲土地及び乙建物の双方につき、Cのために抵当権を設定して、その旨の登記をした後(甲土地についてはAの後順位)、Aの抵当権が実行されるとき、乙建物のために法定地上権が成立する。

3 Bが、乙建物築造後、甲土地についてのみ、Dのために抵当権を設定して、その旨の登記をした場合(甲土地についてはAの後順位)、Aの抵当権及び被担保債権が存続している状態で、Dの抵当権が実行されるとき、乙建物のために法定地上権が成立する。

4 Aは、乙建物に抵当権を設定していなくても、甲土地とともに乙建物を競売することができるが、優先弁済権は甲土地の代金についてのみ行使できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】 正 解 4

1 誤り。抵当権は、設定者に自由に抵当目的物の使用収益を認めるものであるから、建物の収去を求めることはできない(民法369条1項)。

2 誤り。1番抵当権が設定された当時、更地であったときは、2番抵当権設定時までに建物が建築されたときでも、1番抵当権を基準に決定するので法定地上権は成立しない(388条)。

3 誤り。更地に抵当権が設定された場合には、法定地上権は成立しない。更地に抵当権が設定された後に、後順位抵当権設定前に地上に建物が建築された場合に、後順位抵当権の実行がなされても、法定地上権は成立しない(判例)。

4 正しい。更地に抵当権を設定した後に、その土地の上に建物が築造されると、抵当権者は土地とともに建物も競売することができる。ただし、優先弁済権は土地の代価についてのみ行使できる(389条)。