【問】 AがBに対して200万円の金銭債権、BがAに対して200万円の金銭債権を有する場合の相殺(AB間に特約はないものとする。)に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Aの債権がBの不法行為により発生したものであるとき、A・Bは、それぞれ自己の債権で相手方の債権を相殺することはできない。
2 Aの債権が時効によって消滅した後でも、時効完成前にBの債権と相殺適状にあれば、Aは、Bに対して相殺をすることができる。
3 CがBの債権を差し押さえる前にAがBに対する債権を取得していれば、Aの債権の弁済期のほうが、Bの債権の弁済期より遅い場合でも、相殺適状に達すれば、Aは、相殺をCに対抗できる。
4 Aの債権について弁済期が到来していないときでも、Bは、Bの債権の弁済期が到来すれば、相殺することができる。
【解答】 正解 1
l 誤り。民法509条が禁じているのは、不法行為者が、自己の債権で、不法行為により生じた被害者の債権を相殺することであり、反対に、被害者が、不法行為により生じた債権で、不法行為者の有する債権を相殺することは許される。
2 正しい。時効によって消滅した債権が、その消滅以前に相殺適状にあったときは、その債権者は相殺することができる(民法508条)。
3 正しい。判例は、相殺の担保的機能を重視して、民法511条の反対解釈によりAは、その債権が差押後に取得されたものでないかぎり、自働債権及び受働債権の弁済期の先後を問わず、相殺適状に達しさえすれば、差押後においても、これを自働債権として相殺をなしうる、としている。
4 正しい。自働債権の弁済期が到来していれば、受働債権の弁済期が到来していなくても、債務者は、期限の利益を放棄して(民法136条2項)相殺をすることができる(判例)。