任意代理の代理権の範囲(代理人の権限)

任意代理人の代理権の範囲は、本人と代理人の約束によって決まります。
つまり本人が代理権を与える時に範囲を決めます。たとえば、土地の売買、建物の賃貸の代理権です。
したがって任意代理人は、本人から与えられた代理権の範囲内で代理行為を行うことができるのです。
本人から建物の賃貸の代理権を与えられた代理人が、その建物を、売却するような権限外の行為はできません。
代理権の範囲が決まっていない代理人は、保存行為(家屋の修繕等)、物や権利の性質を変えない範囲での利用行為や改良行為をすることはできます。

まとめると、

(1) 代理権を与えるときに権限を定める(売買・賃貸行為等)。
(2) 代理権の範囲がきまってない場合、代理人は次の①②の行為しかできない(103条)。
① 保存行為(家屋の修繕、期限の到来した債務の弁済、未登記不動産の登記など)
② 代理の目的である物または権利の性質を変えない範囲での利用・改良行為(土地や建物の賃貸借、現金の銀行預金、造作の取付など)
※1.農地の宅地化、現金の株式投資などは、権利の性質が変わるのでできない。
※2.①②を超える代理行為は権限ゆ越の無権代理となる(無効である)。

制限行為能力者と任意代理

任意代理人は、行為能力者である必要はないとされています。
したがって、制限行為能力者であっても任意代理人となることができますが、制限行為能力者が代理人として契約を結んでも取り消すことができません。
制限行為能力者が代理人として意思表示をしても、その効果は本人に帰属するのであって、代理人に帰属することはないからです。

よくでる!★注 保護者の同意がなくても、任意代理人になれる。また制限行為能力者のした代理行為を制限行為能力を理由として取り消すことはできない。
※ 尚、未成年者等が任意代理人を選任する場合は、法定代理人の同意が必要であり、同意を得ないでしたときは、取り消すことができる。

代理とは
① 代理人が代理権の範囲内で
② 本人のためにすることを示してなした意思表示の効果が
③ 直接本人に対して効果を生じる
ことをいいます(民法99条)。