【問】 AからB、BからCへとA所有の土地が順次売買された場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Aが行った意思表示に錯誤がある場合、Aに重大な過失があり、Aが取消しを主張できないときでも、Bは、その取消しを主張することができる。
2 Aが差押えを免れるため、Bと共謀してBに登記を移転した場合、Cが善意であれば、当該土地の所有権を主張することができるが、善意のCからさらに当該土地を買い受けたDが悪意の場合、Dは、自己が所有者であると主張することができない。
3 Aの意思表示がBの詐欺による場合、Cが善意無過失であっても、Aは、Bに対して取消しを主張することができる。
4 AがBの債務不履行を理由に売買契約を解除したが、Cが解除前にBから土地を買い受け移転登記を得ていた場合、Aは、Cが悪意であれば、Cに土地の返還を請求することができる。
【解答】 正解 3
l 誤り。錯誤による取消しの制度は表意者を保護するためのものであるから、表意者に重過失があり、表意者が取消しを主張できないときは、相手方も第三者も取消しを主張することができない(判例)。
2 誤り。通謀虚偽表示において、第三者Cが善意であれば、その後の転得者Dが悪意であっても保護される。いったん善意の第三者が登場すれば、その後の転得者が悪意でも、転得者は第三者の地位を承継するからである(大判大3.7.9、94条)。
3 正しい。善意無過失の第三者が現れても、詐欺により意思表示をした者は取り消すことができる。ただ、その取消しの効果を善意無過失の第三者に主張できないだけである(96条3項)。
4 誤り。解除の効果は第三者が対抗要件を具備していれば、その者の善意悪意を問わず及ばない。したがって、AはCが悪意であっても土地の返還を請求することができない(545条1項但し書き) 。