【問】 Aは、Bに対し自己所有の土地に1番抵当権を設定した後に、その土地の上に建物を建築して所有している。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Bの抵当権の効力は、Aがその建物を焼失したことにより取得した保険金支払請求権に及ぼすことができるが、そのためにはその払渡し前に差し押さえなければならない。

2 BはAに対し、抵当権に基づきその建物の収去を請求することができる。

3 AがCに対し当該土地に2番抵当権を設定した場合に、Cの申立てにより当該土地が競売されても、法定地上権は成立しない。

4 Bは、土地、建物を一括競売することができ、競売代金全額から優先弁済を受けることができる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】 正 解 3

1 誤り。土地と建物は別個独立の不動産であり、土地の上に設定された抵当権の効力は、建物には及ばない。したがって、抵当権設定者が土地の上の建物の焼失によって取得した保険金支払請求権には、物上代位をなしえない(民法370条本文、372条)。

2 誤り。抵当権は目的物の交換価値を把握する権利であり、目的物の使用・収益は、抵当権の実行までは設定者に委ねられている。したがって、設定者が通常の用方に従って使用・収益をしている限り、抵当権が侵害されたことにはならず、抵当権に基づいて建物の収去を請求することはできない。

3 正しい。法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時に建物が存在していることが必要であるから、土地の抵当権設定後に建物を建築した場合には、法定地上権は成立しない(判例)。建物の築造は1番抵当権設定後のものであるから、2番抵当権者の申立てにより競売された場合には法定地上権は成立しない(388条)。

4 誤り。土地に抵当権を設定した後、抵当権設定者が抵当地に建物を建てたときは、抵当権者は、土地とともに建物を競売することができるが、この場合、優先弁済を受けることができるのは、土地の競売代金についてだけであり、建物の競売代金から優先弁済を受けることはできない(389条)。