【問】 所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有しているBの取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Bの父が18年間所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を占有し、Bが相続によりその占有を承継した場合でも、B自身がその後2年間占有しただけでは、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができない。
2 Bが8年間自己占有し、引き続き12年間Cに賃貸していた場合には、Bに所有の意思があっても、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができない。
3 DがBの取得時効完成前にAから甲土地を買い受けた場合には、Dの登記がBの取得時効完成の前であると後であるとを問わず、Bは、登記がなくても時効による甲土地の所有権の取得をDに対抗することができる。
4 取得時効による所有権の取得は、原始取得であるが、甲土地が第一種専用農地である場合には、Bは、農地法に基づく許可を受けたときに限り、時効によって甲土地の所有権を取得することができる。
【解答】 正 解 3
1 誤り。Bは、自己の占有と前の占有者の占有を併せて主張することができる(判例)。この結果、Bは20年間占有したことになり、たとえその父の悪意を承継しても(民法187条2項)、時効取得することができる(162条1項)。
2 誤り。Bは8年間自己占有し、その後12年間賃借人Cを介して間接占有している(181条)ので、所有の意思がある以上20年間の占有で時効取得できる。
3 正しい。不動産の取得時効完成前に原所有者から所有権を取得し、移転登記を経由した者に対し、時効取得者は登記なくして対抗できる(判例)。また、この者が時効完成後に移転登記を経由しても、時効取得者は対抗できる(判例)。
4 誤り。時効による取得は、一定期間の占有という事実に与えられる法律効果であるので、農地法3条の許可がなくても、農地を時効取得できる。実務でも、農地の時効取得には、農地法上の許可は不要であるとしている。