【問】 Aが、A所有の1棟の賃貸マンションについてBに賃料の徴収と小修繕の契約の代理をさせていたところ、Bが、そのマンションの1戸をAに無断で、Aの代理人として賃借人Cに売却した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 Aは、意外に高価に売れたのでCから代金をもらいたいという場合、直接Cに対して追認することができる。
2 Cは、直接Aに対して追認するかどうか相当の期間内に返事をくれるよう催告することができるが、Cがこの催告をするには、代金を用意しておく必要がある。
3 Aが追認しない場合でも、CがBに代理権があると信じ、そう信じることについて正当な理由があるとき、Cは直接Aに対して所有権移転登記の請求をすることができる。
4 Cは、Bの行為が表見代理に該当する場合であっても、Aに対し所有権移転登記の請求をしないで、Bに対しCの受けた損害の賠償を請求できる場合がある。
〔問〕 正 解 2
1 正しい。本人は、相手方に対して、無権代理行為の追認をすることができる(113条)。
2 誤り。無権代理行為の相手方(善意、悪意を問わず)は、本人に対して追認をするか否か催告することができる(114条)が、催告のためには、履行の提供の準備をする必要はない。
3 正しい。代理人が与えられた権限の範囲を超えて代理行為を行った場合でも、その相手方が善意無過失(代理人であると信ずべき正当な理由がある場合)であるときは、表見代理が成立し当該契約は有効となる(110条)。したがって、Cは、直接Aに対して所有権移転登記の請求をすることができる。
4 正しい。無権代理行為の相手方は、表見代理が成立する場合でも、無権代理人に対してその責任を追及することができる(相手方の選択による)。
この場合、代理人Bが制限行為能力者でなく、かつ相手方Cが無権代理について善意(無権代理人Bが自分に代理権がないことを知っていた場合・悪意)又は善意無過失(無権代理人Bが自分に代理権がないことを知らなかった場合・善意)であれば、CはBに対して、履行又は損賠賠償責任を追及することができる(117条)。