【問】 建物の賃貸借契約における賃借人Aに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Aが、建物賃借中に建物の修繕のため必要費を支出した場合、Aは、その必要費の償還を受けるまで、留置権に基づき当該建物の返還を拒否できる。
2 Aの債務不履行により建物の賃貸借契約が解除された後に、Aが建物の修繕のため必要費を支出した場合、Aは、その必要費の償還を受けるまで、留置権に基づき当該建物の返還を拒否できる。
3 Aは、留置権に基づき建物の返還を拒否している場合に、当該建物に引き続き居住したとき、それによる利益(賃料相当額)は返還しなければならない。
4 Aは、留置権に基づき建物の返還を拒否している場合に、さらに当該建物の修繕のため必要費を支出したとき、その必要費のためにも留置権を行使できる。
〔問〕 正 解 2
1 正しい。賃借人が必要費を支出した場合、その償還を受けるまで留置権に基づき当該建物の返還を拒むことができる(295条1項)。
2 誤り。賃貸借契約が債務不履行による契約解除された後は、賃借人は建物を占有する正当な権限を有しないことになるが、その状況下で賃借人が必要費や有益費を支出しても、留置権の行使はできない(295条2項・判例)。
3 正しい。Aは被担保債権の弁済を受けるまで、目的物を留置できるが、実質的に留置によって生ずる利益までは保有することはできない。したがって、留置権を行使する賃借人は賃料相当額を不当利得として返還しなければならない(判例)。
4 正しい。留置権者が留置物にさらに必要費や有益費を費やした場合、所有者にそれらの費用償還請求をすることができるとともに、それら請求権のために留置権を行使することができる(299条1項)。