【問】 不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 不法行為の被害者は、損害賠償債権を自働債権として、加害者に対する金銭返還債務と相殺することができない。

2 不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者から加害者へ履行の請求があったときから履行遅滞となり、被害者は、その時以後の遅延賠償金を請求することができる。

3 不法行為がAの過失とBの過失による共同不法行為であった場合、Aの過失がBより軽微なときは、被害者は、Aに対して損害の全額について賠償を請求することはできない。

4 不法行為に関し、被害者にも過失があった場合、加害者から過失相殺の主張がなくても、裁判所は、賠償額の算定に当たって、賠償金額を減額することができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 4

1 誤り。不法行為によって生じた債権のうち、①悪意による不法行為に基づくものと、②人の生命・身体に対する不法行為(悪意か否かを問わない)に基づくものを「受働債権」とする相殺(いわば加害者側からの相殺)は原則として禁止されるが、①②を含む不法行為債権を自働債権とする(いわば被害者からの)相殺は許される(509条)。

2 誤り。不法行為による損害賠償債務は、債権者(被害者)からの催告は必要でなく損害の発生と同時に遅滞に陥るから、不法行為発生時から履行遅滞となり、被害者はそのとき以後の遅延賠償金を請求できる(判例)。

3 誤り。共同不法行為は各自全額の連帯責任を負うので、被害者は、過失の程度に関係なくAに対しても損害額全額の賠償を請求できる(719条1項)。

4 正しい。加害者の過失相殺の主張がなくても、裁判所は、賠償額を減額できる(722条3項・判例)。