【問】 Aの被用者BとCの被用者Dが、A及びCの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為をし、A、B、C及びDが、Eに対し損害賠償債務を負担した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Aは、Eに対するBとDの加害割合が6対4である場合は、Eの損害全額の賠償請求に対して、損害の6割に相当する金額について賠償の支払をする責任を負う。
2 Aが、Eに対し損害を賠償したときは、Aは、BとDの加害割合に応じて、Cに対して求償することができる。
3 Aは、Eに対し損害賠償債務を負担したことに基づき損害を被った場合は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、Bに対し、損害の賠償又は求償の請求をすることができる。
4 Dが、Eに対し損害を賠償し、共同の免責を得たときは、Aに対し、Aの負担部分の割合に応じて求償することができる。
〔問〕 正 解 1
1 誤り。BとDが共同不法行為を行った場合、BとDは、その加害割合にかかわらず、Eの損害全額について連帯して賠償する責任を負う(719条)。またAとCはそれぞれBとDの使用者であるから、BとDがその事業の執行につきEに対して与えた損害については被用者であるBとDと同内容の責任を負う(715条)。よって、AとCも、BとDの加害割合にかかわらず、Eの損害全額について連帯して賠償する責任を負う。
2 正しい。共同不法行為者の負う損害賠償債務は連帯債務(436条)であるから、共同不法行為者間の求償についても連帯債務者間の求償権の規定(442条)が適用される。また、共同不法行為者であるBとDの各使用者であるAとCの損害賠償債務にも同条の規定が適用される。よって、Aは、共同の免責を得るため支出した額がその負担部分を超えるかどうかに関係なく、各自の負担部分の割合(BとDの加害割合)に応じて求償することができる。
3 正しい。記述の通り(715条3項,判例)。
4 正しい。本問肢2解説参照。共同不法行為者DがEの損害を賠償し、共同の免責を得たときは、(Dと連帯して損害賠償債務を負う)他の共同不法行為者Bに対し、その負担部分の割合に応じて、求償することができるから、Bの使用者であるAに対しても、同様にその負担部分の割合(被用者Bの加害割合)に応じて求償できる。