【問】 借主Aは、B所有の建物について貸主Bとの間で賃貸借契約を締結し、敷金として賃料2ヵ月分に相当する金額をBに対して支払ったが、当該敷金についてBによる賃料債権への充当はされていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

1 賃貸借契約が終了した場合、建物明渡しと敷金返還とは同時履行の関係に立たず、Aの建物明渡しはBから敷金の返還された後に行えばよい。

2 賃貸借契約期間中にBが建物をCに譲渡した場合で、Cが賃貸人の地位を承継したとき、敷金に関する権利義務は当然にCに承継される。

3 賃貸借契約期間中にAがDに対して賃借権を譲渡した場合で、Bがこの賃借権譲渡を承諾したとき、敷金に関する権利義務は当然にDに承継される。

4 賃貸借契約が終了した後、Aが建物を明け渡す前に、Bが建物をEに譲渡した場合でBE間でEに敷金を承継させる旨を合意したとき、敷金に関する権利義務は当然にEに承継される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 2

1 誤り。敷金返還請求権は、賃貸借終了後家屋明渡し完了時点で発生する(民法622条の2・1項1号)。よって、賃借人が、敷金の返還を受けるには、先に建物の明渡しを完了する必要がある(同時履行の関係にない)。

2 正しい。建物譲渡に伴い賃貸人たる地位に承継があった場合、敷金に関する権利義務は、新賃貸人に承継される(民法605条の2・4項)。

3 誤り。賃借権が旧賃借人から新賃借人に適法に譲渡された場合、敷金に関する法律関係は新賃借人に承継されず、賃貸人は、敷金から賃貸借に基づいて発生した債務を控除した残額を旧賃借人に返還しなければならない(民法622条の2・1項2号)。

4 誤り。賃貸借終了後明渡し完了前に建物の所有権が移転した場合には、賃貸人の地位自体が新所有者に承継されるわけではないので、敷金に関する権利義務も自動的に新所有者に移転されることはない(上記肢2参照)。また、旧所有者と新所有者の合意によって、敷金に関する権利義務のみを新所有者に移転することは可能であるが、その場合には、新旧所有者間の合意のみでなく、賃借人の承諾を必要とする(判例)。