制限行為能力者の取引
契約が無効となるのではありません。
「取り消すことができる」とは、契約は有効であるが取り消してもいいですよということです。
そして取消しをすれば契約は無効になります。
無効とは、最初から契約は無かったことにすることです。
なお、取消しをしないでその契約を保護者が認めることもできます。
このことを追認といいます。追認すると契約は最初から有効となります。
未成年者とは
(1) 未成年者とは、20歳未満の人のことです。
ただし、婚姻により成年者とみなされることに注意。
男性は18歳、女性は16歳になれば、婚姻することができる。
未成年者の保護者は親(親権者)です。
親のいない子には、未成年後見人が保護者として付けられる(家庭裁判所)。
これら保護者のことを法定代理人という。
※1 未成年者は婚姻により成年者とみなされるが、離婚した場合も同様である。
※2 未成年者が婚姻をするには、父母の同意が必要である。父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる(737条)。
(2) 未成年者が法律行為をするには、法定代理人にやってもらうか、法定代理人の同意が必要です。
● 取り消すことができるのは、未成年者自身または法定代理人です。
※ 親権者が二人(父母)いるときは、親権の行使は原則として共同で行う。
したがって、父母の一方が同意し他方が同意しなかった場合には、有効な同意があったとはいえない。
これに対して、一方が双方の名前で勝手に同意を与えたときは、相手方を保護するため有効な同意があったものとして取り扱う。
ただし、相手方が他方の不同意を知っていた場合は別である(818条3項・825条)。
(3) 未成年者でも、一人でやっていいものがある
① 単に権利を得ること(贈与を受けること)。負担付き贈与はダメ!
義務を免れる行為(借金の返済を免除される等)
② a. 目的を定めて処分を許した財産
例えば、勉学費の支払い、一人暮らしを許された未成年者が生活に当然に付随する電気・ガス等の供給契約を締結する等
b. 目的を定めないで処分を許した財産
自分の小遣いで買物する等
③ 法定代理人に営業を許可された場合に、その営業の範囲内で行う行為等。
※ 未成年者でも単独で商売ができるようにする制度のことです。
法定代理人から許可を受けた営業(商売等)について、未成年者は成年者と同一の行為能力を有すると認められ、単独で完全に有効な契約ができるのです。
例えば、宅地建物取引業(不動産会社)を営むことを法定代理人から許可をもらった場合は、その不動産取引の営業については完全に有効な契約ができるのです。
もっとも法定代理人はその営業について未成年者がやっていけないときは、その営業を制限したり又はその許可を取り消して、元の状態に戻すことができます。
①から③は、未成年者が単独でできる行為であり、取り消すことができないことに注意しよう。
成年被後見人とは
(1) 成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、後見開始の審判を受けた者(判断能力が喪失(そうしつ)している人)。
※ 家庭裁判所は本人、配偶者、四親等内の親族等の請求により後見開始の審判をすることができる。
※ 成年被後見人には、成年後見人(保護者)を付ける(家庭裁判所が行う)。
(2) 成年被後見人が法律行為を行う場合には、成年後見人が代理して法律行為を行う。
※ ただし、日用品の購入または日常生活に関する行為は取り消すことができない。
● 取り消すことができるのは成年被後見人自身又は成年後見人です。
被保佐人とは
(1) 被保佐人とは、精神上の障害によって事理を弁識する能力が著しく不十分な者で、保佐開始の審判を受けた者(判断能力が著しく不十分な人)。
※1 家庭裁判所は本人、配偶者、四親等内の親族等の請求により保佐開始の審判をすることができる。
※2 被保佐人には、保佐人(保護者)を付ける。
(2) 被保佐人が、一定の法律行為を行う場合には、保佐人の同意が必要である。
● 保佐人の同意を得ないで次の行為をした場合、取り消すことができる。
※ その他は単独でできる。
利息を生む金銭、賃料を生みだす不動産などは、元本と呼ばれる。この元本を受け取ったり、利用すること。
貸金の返済を受ける行為・現金を投資したり、銀行預金をおろすこと。
※利息、賃料の領収は同意はいらない(判例)。
② 借財又は保証をすること。
金銭を借り受けたり、他人の債務を保証したり、約束手形を振出すこと。
時効の利益の放棄も借財にあたる(判例)。
③ 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪(とくそう)を目的とする行為をすること。
不動産又は自動車や電話加入権・株式などの重要な財産に関する権利の取引又は担保の設定など。
④ 訴訟行為をすること。
原告となって訴訟をすること。
⑤ 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
贈与をしたり、紛争について和解したり、第三者に解決を任せる仲裁契約をすること。
※贈与を受けること(単純贈与)はできるが、負担付贈与は同意を要する。
⑥ 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
⑦ 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
贈与を断わること、遺言による利益(遺贈)を放棄したり、負担付贈与を受けることを承知すること。
⑧ 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
家の新築、増改築、大修繕の請負契約をすること。
⑨ 短期賃貸借の期間を超える賃貸借(長期)
山林10年
土地5年 を超える賃貸借をすること
建物3年
※山林10年、土地5年、建物3年の期間以下の賃貸借は短期賃貸借として単独でできることに注意せよ!
⑩ その他、審判により定められた保佐人の同意を必要とする行為。
※ ただし、日用品の購入または日常生活に関する行為は取り消すことができない。
● 取り消すことができるのは被保佐人自身または保佐人です。
被補助人とは
(1) 被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者で、補助開始の審判を受けた者(判断能力が不十分な人)。
※1 被保佐人との違いは、著しくという言葉が入らないことです。
※2 家庭裁判所は本人、配偶者、四親等内の親族等の請求により補助開始の審判をすることができる。
※3 本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意を得なければならない。
※4 被補助人には補助人(保護者)を付ける。
(2) 補助人の同意を得ることを要すると審判された行為(特定の法律行為)について補助人の同意(又は裁判所の許可)を得ないでした行為は、取り消しすることができる(その他は単独でできる)。
※ 取り消すことができるのは被補助人自身又は補助人です。