制限行為能力者の詐術

制限行為能力者が、能力者であると信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない(取引の相手方を保護するため)。

※ 詐術を用いるとは「自分は能力者である」とか「親の同意を得ている」など。

取消しの効果

取り消すことによってその行為は無効とされますが、現に利益を得ている場合には、その利益の限度で相手方に返さなければならない。
※ 「利益を得ている」とは、引き渡された物や金(生活費に使った)などは、すべて元へ戻さなければなりません。

制限行為能力者と取引した相手方の追認の催告権

① 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者となった後は、その者に対して1カ月以上の期間を定めて、その期間内に、その取り消すことのできる行為を追認するかどうかの催告をすることができる。

その者がその期間内に確答しないときは、その行為を追認したものとみなされる(契約は完全に有効となる)。

② 制限行為能力者がまだ行為能力者となっていないときは、その者の保護者に対して①の催告をしたが、その期間内に確答がないときは、その行為を追認したものとみなされる(契約は完全に有効となる)。

③ 被保佐人又は特定の法律行為の審判を受けた被補助人に対しては、①の期間内にその保佐人又は補助人の追認を受けるべき旨を催告することができる。被保佐人又は被補助人がその期間内に追認を受けた旨の通知を発しなかったときには、その契約は、取り消したものとみなされる(契約は無効となる)。

制限行為能力者の行為の追認の催告権

制限行為能力による契約の取消しは、取消し前の善意の第三者にも対抗することができる。

善意とは、ある事情を知らないこと、または真実でないことを真実と誤信すること。なお、善意には十分に気をつけたが知らなかったという善意無過失と、十分に気をつけなかったという善意有過失がある。
悪意とは、真実を知っていること。
対抗とは、権利や言い分を主張すること。

その他

(1) 未成年後見人は、1人でなければならない。
(2) 成年後見人、保佐人、補助人は一人又は数人を選任することができる。数人いる場合は、第三者の意思表示は、その内の一人に対してすればよい。
(3) 成年後見人、保佐人、補助人が制限行為能力者の居住用建物またはその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除、抵当権の設定その他これに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。許可を得ずに行ったときは、契約等は無効となる。
(4) 成年被後見人、被保佐人、被補助人が行為能力を回復したときは、審判の請求ができる者の請求により家庭裁判所がそれを取り消す(行為能力者となる)。
(5) 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、本人その親族等の請求によって、成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人を選任することができる。
(6) 保佐人や補助人が、被保佐人や被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、保佐人や補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
(7) 家庭裁判所は、保佐人・補助人に対しては、一定の者の請求によって、特定の法律行為について代理権を付与することができる。
※ 本人以外の者の請求によって、保佐人・補助人に対して代理権を付するときは、本人の同意が必要である。

● 予備知識
完全に意思能力が欠けている者(意思無能力者)の意思表示は、最初から無効である。

● 任意後見契約
民法に定められた成年後見制度は、法定後見と呼ばれます。
一方、老後における財産管理等の委託として、意思能力が十分なうちにあらかじめ特定の人に一定事項を委任しておくことができます。これを任意後見と呼びます。任意後見契約により、本人(委任者)と任意後見受任者(任意後見人)との間で行なわれ、家庭裁判所は任意後見監督人を選任することとなっています。

● 身寄りのない方の保護
身寄りがないなどの理由で、申立てする人がいない方の保護を図るため、市町村長に法定後見(後見・保佐・補助)の開始の審判の申立権が与えられています。