重要な事実の告知義務

宅建業者は、取引の相手方等に対して、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実(嘘)のことを告げる行為をしてはならない(47条1号)。
イ.重要事項の説明事項
ロ.供託所等に関する説明事項
ハ.契約書面の記載事項(当事者の氏名・名称、住所を除く)
ニ.その他 宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であって、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの

ポイント
1.重要な事実を告知しなかったが、実害が生じなかったとしても違反となる
2.「故意」即ち「わざと」したことを要件としているので、業者の過失等によって重要な事実を告げなかった場合は、規制の対象とならない。ただし、業者として当然の注意を怠ってそれを知り得なかった場合には、著しく不当な行為として監督処分の対象となることがある。
3.建物の売買等に課される消費税を故意に告げなかった場合は、規制の対象となる。
4.宅建業者が賃借の媒介をするにあたり当該建物の近隣にゴミの集積場所を設置する計画があるのに、その計画について故意に借主に告げなかった場合は、規制の対象となる。
5.故意に重要事項説明義務(35条)に違反すると直ちに本条違反となり、罰則の適用を受ける。

手付貸与等による契約締結の誘引の禁止

                    
業者は手付けについて貸与その他信用の供与をすることにより、契約の締結を誘引する行為をしてはならない(47条3号)。

ポイント
1.契約に応ずる者がなくとも、手付の貸付け等の条件で契約締結の誘引をしただけで規制の対象となる。
2.ここでいう「信用の供与」には、手付としての約束手形の受領、手付の分割受領も含まれる。
3.手付金の支払い期限を猶予する条件で契約締結を誘引する行為も規制の対象となる。
4.手付金に関し銀行との間の貸借のあっせん又は手付金を減額するという条件で契約の締結を誘引することは、規制の対象とならない

契約締結等に際しての不適正な行為の禁止(罰則はない)

⑴ 契約の締結の勧誘に際して利益を誤認させるべき判断を提供することの禁止…宅地建物取引業者又はその代理人使用人その他の従業者(以下本講中「宅地建物取引業者等」という)は、宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない(同法47条の2第1項)。
⑵ 契約の締結等のために威迫(おどし)をすることの禁止…宅地建物取引業者等は、宅地建物取引業に係る契約を締結させ、又は宅地建物取引業に係る契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、宅地建物取引業者の相手方等を威迫してはならない(同法47条の2第2項)。
⑶ 契約の締結等に関する行為であって取引の相手方等の保護に欠ける行為の禁止(国土交通省令)
① 宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をすること。
(イ)当該契約の目的物である宅地又は建物の将来の環境又は交通その他の利便について誤解させるべき断定的判断を提供すること
(ロ)正当な理由なく、当該契約を締結するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒むこと。
(ハ)当該勧誘に先立って宅地建物取引業者の商号又は名称及び当該勧誘を行う者の氏名並びに当該契約の締結について勧誘をする目的である旨を告げずに、勧誘を行うこと。(後日勧誘だと気づいた場合)
(ニ) 宅地建物取引業者の相手方等が当該契約を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続すること。
(ホ) 迷惑を覚えさせるような時間に電話し、又は訪問すること。
(へ) 深夜又は長時間の勧誘その他の私生活又は業務の平穏を害するような方法によりその者を困惑させること。
② 宅地建物取引業者の相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと
③ 宅地建物取引業者の相手方等が手付を放棄して契約の解除を行うに際し、正当な理由なく、当該契約の解除を拒み、又は妨げること

証明書の携帯等の義務(従業者証明書

① 業者は従業者に証明書を携帯させなければ、その者を業務に従事させてはならない(48条1項)。
※ 従業者には、非常勤の役員、単に一時的に事務の補助をする者も含まれる
② 従業者が従業者証明書を忘れたり紛失したときは、会社の社章や名刺で身分を明らかにすることはできない。
※ 従業者証明書には、業務に従事する事務所の名称、所在地、従業者証明書番号、証明書有効期間等が記載されている。
③ 取引士で業務に従事する者も、もちろん証明書を携帯する義務を負う
④ 従業者は取引の関係者から請求があれば証明書を提示しなければならない(48条2項)。(罰則なし)

20.従業者名簿の備付け          
 業者はその事務所ごとに従業者名簿を備え、取引の関係者から請求があったときは閲覧に供しなければならない(48条3項、4項)。
ポイント
1.案内所等には名簿を備える義務はない。
2.名簿の保存期間は、最終記載日から10年間
● 従業者名簿の記載事項
従業者証明書を発行した者については、すべて従業者名簿に記載すること。
イ.氏名・住所
ロ.従業者証明書番号
ハ.生年月日
ニ.主たる職務内容
ホ.取引士であるか否かの別(専任・一般を問わず
ヘ.事務所の従業者となった年月日
ト.事務所の従業者でなくなったときは、その年月日
電子ファイル化された名簿上に表示する方法でも行える(帳簿も同じ)
ファイルや磁気ディスクに記録されている事項をプリントアウトしたもの、またはディスプレイ上に表示する方法で閲覧に供することもできる。