原則として、契約の当事者は契約を守らなければなりません。しかし、世の中には社会的な判断能力が欠けている者等、あるいは未成年者のように社会的に未経験な者もいます。

そこで民法は、判断能力が不十分な人等の範囲をあらかじめ定め、取引等おいてその人たちの利益を保護するための制度を規定しています。

 

1.制限行為能力者とは

(1) 原則として、契約は守らなければならない。判断能力が十分にある者であれば当然です。しかし、世の中には判断能力が不十分な人もいますからそのような人を保護するため(経済社会の犠牲にならないように)の制度です。

制限行為能力者とは、原則として、一人では契約できない人のこと、その人には保護者を付けて、判断能力の不十分な点を補っているのです。

そして、制限行為能力者が保護者に相談することなく単独で法律行為(契約等)を行ったときは、その行為を後から一方的に取り消すことができるのです。
無効ではありません。)

※1 取引の相手側からは取り消すことはできない。
※2 「取り消すことができる」とは、取り消しするまでは『一応有効である』取り消せば初めから無効になります。無効とは、最初から契約はなかったことにすることです。
※3 保護者は、制限行為能力者が単独でした行為を追認することができます。制限行為能力者にとって有利な契約もあり得るので、その契約を認める(事後承諾)ことを追認という。追認すると初めから完全に有効な契約だったことになります。

 

2.制限行為能力者の種類・保護者

制限行為能力者は4種類です。

未成年者(4条)
20歳未満の人のことです。ただし、婚姻により成年者とみなされることに注意。男性は18歳、女性は16歳になれば、婚姻することができる。未成年者の保護者は親(親権者)です。親のいない子には、未成年後見人が保護者として付けられる(家庭裁判所)。これら保護者のことを法定代理人という。

成年被後見人(7条)
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所により後見開始の審判を受けた者です。保護者は成年後見人。

被保佐人(11条)
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者で、家庭裁判所により保佐開始の審判を受けた者です。保護者は保佐人。

被補助人(15条)
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者で、家庭裁判により補助開始の審判を受けた者です。保護者は補助人。

※1.家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族等の請求により上表②③④の審判の申立てができる。
※2.成年被後見人、被保佐人、被補助人が行為能力を回復したときは、審判の請求ができる者の請求により家庭裁判所がそれを取り消す(行為能力者となる)。
※3.本人以外の者の請求によって、補助開始の審判をするには、本人の同意を得なければならない。