売主A(宅建業者) - 【申込み・売買契約】- B買主(宅建業者でない者)
※申込み・売買契約の場所が喫茶店やレストラン等
「契約は守らなければならない」これは民法の原則です。しかし、業者自ら売主で買主が一般の者であるときは、宅建業法によるクーリング・オフ制度の適用があります。
(1) 宅建業者が自ら売主となる宅地建物の売買契約において、事務所等以外の場所で、買受けの申込みまたは売買契約を締結した者(Bさん)は、書面により申込みの撤回または契約の解除を行うことができる(買受けの申込みを事務所等で行い、事務所等以外で契約締結した買主を除く)。
※ 業者間の取引には適用されない。
(2) 事務所等以外の場所とは
精神的に不安定な場所です。つまり冷静な判断ができないような下記のイ~ハ等の場所です。
ロ.テント張りの案内所等(土地に定着していない)、仮設小屋の案内所等
ハ.宅建業者が申出た場合の購入者の自宅、勤務先
イ.ロ.ハのような事務所等以外の場所において申込をしたり、売買契約をした買主等は、書面により、申込の撤回、売買契約の解除をすることができます。
(3) 事務所等とは
精神的に安定した場所と考えて下さい。下記の①~⑤の場所です。
事務所等において申込をしたり、売買契約を締結した場合は、申込を撤回したり、売買契約を解除することはできません。
② 専任の取引士の設置義務のある(契約等を行う案内所等)
a.事務所以外で、継続的に業務を行うことができる施設を有するもの
b.土地に定着した、一団の宅地建物の分譲を行う際の案内所
c.土地に定着した、宅地または建物の売買契約に関する説明をした後、当該宅地または建物に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合、その場所
③ 他の宅建業者に媒介または代理を依頼した場合の、その宅建業者の①または②の場所
④ 購入者から申し出た場合の、購入者の自宅または勤務先
⑤ マンション分譲や戸建分譲の場合のモデルルーム、モデルハウス等(土地に定着している)
※ 上記a.b.cの場所においてもし、これらの場所に専任の取引士を設置していなかったり、標識の掲示や案内所の届出がなかったときにどうなるかということが問題になるが、その場合でもクーリング・オフによる撤回、解除はできない。要注意(55年通達、63年通達)。
ただし、専任の取引士の設置義務違反や標識の掲示義務、案内所の届出義務違反に対しては、別途、監督処分することになる。
(4) 申込と売買契約を締結した場所が異なる場合
このような場合は、最初に行った申込の場所で決められます。この場合、申込を事務所等で行っていますので、事務所等以外の場所で締結した売買契約をクーリング・オフによって解除することはできません。
(5) 撤回等できる場所(事務所等以外の場所)で、申込み、売買契約をした場合でも、撤回等できない場合がある(2つのケースがある)。
※1.業者がクーリングオフできる旨の告知をするときは必ず書面を交付しなければならない。
※2.クーリングオフできる旨の告知は、業者の義務ではない。
※3.業者がクーリングオフできる旨の告知をしないときは、8日間の起算ができないので、買主側は原則としていつまでも申込み等の撤回ができる。
※1.契約の履行が両方とも終了しているから、取引安定のため撤回等を認めない。
※2.業者側が一方的に引渡等、契約の履行を終了させた後であっても、代金の全部を支払っていない(代金の一部を支払った等)買主側からは申込みの撤回等ができる点に注意。
(6) 申込みの撤回等の方式
申込みの撤回等の意思表示は書面によらなければならず、申込みの撤回等の効力はその書面を発したときに生じる。
※1.口頭による意思表示は原則として無効。
※2.告知書の交付を受けた場合には、8日以内に書面を発すれば有効に撤回等ができる。「8日以内に到達」でない点に注意。
(7) 申込みの撤回等の効果
① 業者は申込みの撤回等に伴う損害賠償や違約金の支払を請求できない。
② 手付金その他の受領した金銭をすみやかに申込者または買主に返還しなければならない。
※1.返還に際して利子をとることはできない。
※2.業者にとっては無条件白紙撤回と同様の結果となる。
(8) 違反する特約の効力
クーリングオフの規定に反する特約は、買受けの申込者または買主に有利なものは有効であるが、不利なものは無効となる。