【問】 Aの所有する土地をBが取得したが、Bはまだ所有権移転登記を受けていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、Bが当該土地の所有権を主張できない相手は、次の記述のうちどれか。
1 Aから当該土地を賃借し、その上に自己名義で保存登記をした建物を所有している者
2 Bが移転登記を受けていないことに乗じ、Bに高値で売りつけ不当な利益を得る目的でAをそそのかし、Aから当該土地を購入して移転登記を受けた者
3 当該土地の不法占拠者
4 Bが当該土地を取得した後で、移転登記を受ける前に、Aが死亡した場合におけるAの相続人
【解答】 正 解 1
1 正しい。土地を賃借してその上に所有権保存の登記をした者は、当該賃借権につき対抗力を有する(借地借家法10条1項)。一方、他人に賃貸中の土地の譲受人は、その所有権の移転について登記を経由しなければ、賃借人に対抗し得ず、賃貸人たる地位を取得したことも主張できない(判例)。したがって、登記のないBは、土地を明け渡せと請求することはできない(民法177条参照)。
2 誤り。Bが移転登記を受けていないことに乗じて、Bに高値で売りつける目的で、Aから当該土地を購入した者は、「背信的悪意者」である(判例)。背信的悪意者に対しては、登記なくして対抗できる。
3 誤り。何らの権限なく不動産を占有する不法占拠者は、民法177条にいう第三者に該当せず、これに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗できる(判例)。
4 誤り。売主Aの相続人はAと同一人格とみなせるので、売買の当事者と同じであるから、Bは登記なくして対抗できる。