【問】 BがAの代理人として、C所有のマンションについてCと売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Aの指図により購入した当該マンションは、Cが元の所有者Dを騙して買い入れたものであり、BがCとの間で売買契約締結後にDが当該マンションのCとの売買契約をCの詐欺を理由として取り消した場合、BがCの詐欺の事実について善意無過失であった場合には、Aがこれを知っていた場合であっても、AはBの善意無過失を主張してマンションの所有権取得を主張することができる。
2 Bの代理行為がCとの通謀虚偽表示に基づくものであった場合、Aがそのことを知らないときには、CはAに対し、その行為について無効を主張できない。
3 当該売買契約の締結がBの詐欺によるものである場合、AがBの詐欺行為を知らずかつ知らないことに過失がなかったときでも、CはAに対し、当該売買契約の取り消しを主張できる。
4 BがAの代理人であることを示さないで当該売買契約を締結した場合、CがBはAの代理人であることを知っていたときでも、Aは当該マンションの引渡しをCに求めることができない。
〔問〕 正 解 3
1 誤り。本肢は、Cの詐欺に基づくCD間の売買に関して、Aが「善意の第三者」に当るか否かが問題となる。本肢のような代理行為の場合、相手方の意思表示の効力が、それを受領した側の善意・悪意等により影響を受ける場合は、その善意・悪意等は代理人を基準として決するのが原則である(101条2項)が、代理人が本人から特定の代理行為を委託された場合は、たとえ代理人が善意無過失であったとしても本人が悪意又は有過失であれば、本人は代理人の善意無過失を主張できない(同条3項)。よって、Aは自身が悪意である以上、代理人Bの善意無過失を主張することができず、善意の第三者には当らない。
2 誤り。Bが代理人としてCと締結したAC間の売買契約は、虚偽表示に基づくものであるため無効となる(101条1項,94条1項)。またAは、BC間の虚偽表示に関する「第三者」には当たらないため、CはAに対して虚偽表示による無効を主張できる(94条2項)。
3 正しい。本肢の場合、契約の当事者は本人Aと相手方Cであるから、代理人の詐欺がいわゆる「第三者詐欺」に当るかが問題となるが、代理人のなした行為の効果は直接本人に帰属する関係にある以上、代理人は「第三者」ではなく、「第三者詐欺」に当らない。よって、Aが善意無過失であってもCはAに対し、売買契約の取消しを主張できる。
4 誤り。代理人が、代理人であることを示さないで代理行為を行ったときは、その行為は代理人自身の行為とみなされ、その効果は本人に帰属しない。ただし、相手方が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、本人に帰属する(100条)。