【問】  同時履行の抗弁権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 宅地の売買契約における買主が、代金支払債務の弁済期の到来後も、その履行の提供をしない場合、売主は、当該宅地の引渡しと登記を拒むことができる。

2 宅地の売買契約が解除された場合で、当事者の一方がその原状回復義務の履行を提供しないとき、その相手方は、自らの原状回復義務の履行を拒むことができる。

3 建物の建築請負契約において、完成した建物に契約内容に適合しない欠陥があり、その点につき請負人の責に帰すべき事由がある場合、請負人から損害賠償の提供を受けるまで、注文者は当該請負契約に係る報酬の支払いを拒むことができる。

4 金銭の消費貸借契約の貸主が、借主の借金に係る抵当権設定登記について、その抹消登記手続の履行を提供しない場合、借主は、当該借金の弁済を拒むことができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 4

1 正しい。代金の支払いと宅地の引渡・登記は、同時履行の関係に立つ(533条)。

2 正しい。当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係である(546条)。

3 正しい。請負契約の目的物に契約内容に適合しない欠陥があり、その点につき請負人の責に帰すべき事由がある場合は、注文者は売主の担保責任として、その損害の賠償を請求することができる(559条,564条)。またこの注文者の損害賠償請求権と請負人の請負報酬請求権は同時履行の関係となる(533条)。よって、注文者は、請負人が損害賠償の提供するまで、請負報酬の支払いを拒むことができる。

4 誤り。債務の弁済と抵当権設定登記の抹消は、先に借主が弁済しない限り、抵当権の抹消手続きの履行を請求できない(判例)。つまり。債務の弁済と抵当権設定登記の抹消は、同時履行ではない。