【問】  不法行為に基づく損害賠償責任に関する次の記述中、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 他人に損害を加えた場合の責任を弁識する能力を有する未成年者がした加害行為については、その監督義務者は損害賠償責任を負わない。

2 加害者は、不法行為に基づく損害賠償の請求を受けたときから、遅延損害金の支払義務を負う。

3 不法行為に基づく損害賠償請求権は、不法行為のときから3年で時効により消滅する。

4 不法行為により被害者が死亡したときには、その父母、配偶者及び子は財産権を害されなかったときでも、損害の賠償を請求することができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 4

1 誤り。加害行為をした未成年者が責任無能力者であればその責任を負わない(712条)が、その場合には、監督義務者が補充的に責任を負うことになる(714条)。

他方で、親権者は、責任能力を有する未成年者に対しても監督義務を負う(820条)ので、親権者の監督上の不注意と損害との間に因果関係が認められる場合には、責任能力を有する未成年者の親権者についても民法709条の不法行為が成立し、責任能力を有する未成年者の不法行為責任と併存的に責任を負う。

2 誤り。債務不履行による損害賠償請求権は、期限の定めのない債権として成立し、催告によって遅滞を生ずる(412条3項)。しかし、不法行為に基づく損害賠償債務は、催告をまたずに損害発生と同時に履行遅滞となり(最判昭37.9.4)、遅延損害金が発生する。

3 誤り。不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時より3年(人の生命または身体を害する不法行為の場合には5年)、不法行為の時より20年を経過したときは、時効によって消滅する(724条)。

4 正しい。民法711条は、他人の生命を侵害した者は、それによる被害者の父母、配偶者および子の精神的損害について賠償責任を負うとしている。