【問】 自らが所有している甲土地を有効利用したいAと、同土地上で事業を行いたいBとの間の契約に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で公正証書によらずに存続期間を5年とする土地の賃貸借契約を締結する場合、約定の期間、当該契約は存続する。しかし、Bが建物を建築せず駐車場用地として利用する目的で存続期間を35年として土地の賃貸借契約を締結する場合には、期間は定めなかったものとみなされる。
2 甲土地につき、Bが1年間の期間限定の催し物会場としての建物を建築して一時使用する目的で土地の賃貸借契約を締結する場合には、当該契約の更新をしない特約は有効である。しかし、Bが居住用賃貸マンションを所有して全室を賃貸事業に供する目的で土地の賃貸借契約を締結する場合には、公正証書により存続期間を15年としても、更新しない特約は無効である。
3 甲土地につき、小売業を行うというBの計画に対し、借地借家法が定める要件に従えば、甲土地の賃貸借契約締結によっても、又は、甲土地上にAが建物を建築しその建物についてAB間で賃貸借契約を締結することによっても、Aは20年後に賃貸借契約を更新させずに終了させることができる。
4 甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で存続期間を30年とする土地の賃貸借契約を締結している期間の途中で、Aが甲土地をCに売却してCが所有権移転登記を備えた場合、当該契約が公正証書でなされていても、BはCに対して賃借権を対抗することができない場合がある。
〔問〕 正 解 1
1 誤り。建物所有を目的とする土地賃借権の存続期間は、事業用定期借地権の場合を除き、最短30年となる(3条)。本肢のBの土地賃借権は事業用定期借地権ではない(公正証書でない、存続期間が10年以上でない)から存続期間は30年となる。
尚、建物所有を目的としない駐車場用地としての土地賃貸借には借地借家法の適用はなく民法が適用されるが、民法上の賃貸借の存続期間は50年以内とされている(民法604条)ので、存続期間を35年とする定めは有効である。
2 正しい。一時使用目的で土地を賃貸した場合には、借地借家法の更新に関する規定は適用されない(25条)から、更新しない旨の特約は有効である。
また例え事業専用建物であっても人の居住用の建物については事業用定期借地権の設定はできない(23条)。よって、公正証書により存続期間を15年(10年以上)と定めた場合でも、事業用定期借地契約とはならず通常の借地契約となり、存続期間は30年となる他、更新しない旨の特約は借地権者に不利になるので無効となる(9条)。
3 正しい。土地に関しては存続期間を20年とする事業用定期借地契約(23条)とすることにより、又は建物に関しては存続期間を20年の定期建物賃貸借契約(38条)とすることにより20年後に更新させず賃貸借を終了させることができる。
4 正しい。借地権を第三者(新たな所有者C)に対抗するには、対抗要件として、借地権自体の登記(民法605条)又は借地上の建物の登記(10条)が必要であり、公正証書には対抗力はない。