【問】 A所有の甲建物につき、Bが一時使用目的ではなく賃料月額10万円で賃貸借契約を締結する場合と、Cが適当な家屋に移るまでの一時的な居住を目的として無償で使用貸借契約を締結する場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。

1 BがAに無断で甲建物を転貸しても、Aに対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除できないのに対し、CがAに無断で甲建物を転貸した場合には、Aは使用貸借契約を解除できる。

2 期間の定めがない場合、AはBに対して正当な事由があるときに限り、解約を申し入れることができるのに対し、返還時期の定めがない場合、AはCに対していつでも返還を請求できる。

3 Aが甲建物をDに売却した場合、甲建物の引渡しを受けて甲建物で居住しているBはDに対して賃借権を主張することができるのに対し、Cは甲建物の引渡しを受けて甲建物に居住していてもDに対して使用借権を主張することができない。

4 Bが死亡しても賃貸借契約は終了せず賃借権はBの相続人に相続されるのに対し、Cが死亡すると使用貸借契約は終了するので使用借権はCの相続人に相続されない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 2

1 正しい。賃貸借の無断転貸の場合、背信的行為ではない特別の事由があれば契約解除することができない(判例・612条)。使用貸借は無断で転貸したときは、契約を解除できる(民法594条2項3項)。

2 誤り。期間の定めのない建物賃貸借は、いつでも賃貸人から解約申入れをすることができるが、正当事由が必要である(28条,27条)。期間の定めがない使用貸借において、使用収益の目的を定めた場合は、その目的に従った使用収益を終えるまで契約は存続する(民法597条2項)。尚、貸主は、使用貸借が目的に従った使用収益をするに足りる期間を経過した後または使用収益の目的を定めなかったときは、いつでも契約を解除することができる(民法598条1項,2項)。

3 正しい。賃借人は、建物の賃借権の登記がなくても、建物の引渡しを受けていれば第三者に対抗できる(31条)が、使用貸借の借主には、このような対抗力はない。

4 正しい。借主が死亡しても賃貸借契約は終了せず、賃借権は相続人に相続されるが、使用貸借は、借主の死亡により終了し(民法597条3項)、相続されない。