【問】 時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aが時効によりBの建物を取得したとき、時効完成前のCによる不法な建物の損壊に対しては、Bが損害賠償請求権を有する。

2 AがBの土地を所有の意思をもって平穏かつ公然に占有し、当該土地をAがCに勝手に賃貸している場合、Cの占有中はAの取得時効は進行しない。

3 Aが自己所有地をBに売却した場合において、Bが自分の父が死亡したときに当該土地の売買代金を支払うこととした場合、Aの代金請求権は、AがBの父の死を知ったときから10年間行使しないときに時効により消滅する。

4 AがBの土地をBのものと知りながら、所有の意思をもって平穏かつ公然に6年間占有したのち、当該土地を善意無過失のCに譲渡した場合、その後Cが4年間引き続き占有したとしてもCは当該土地を時効取得しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 4

1 誤り。時効が完成すれば、その効力は起算日に遡る(144条)。したがって、Aがこの建物を時効起算日から所有していたことになり、Cに対する損害賠償請求権はAに帰属する。

2 誤り。取得時効の要件である占有は間接占有(代理占有・181条)も含む(判例)。本肢のようにAが土地をCに賃貸し、Cが土地の使用(直接占有)を継続している場合には、Cの占有には、Cが自身のために土地を占有しているという側面とともに、Aが占有代理人Cによって土地を間接的に占有している(間接占有)という側面があるため、Cの占有期間(貸借期間)中もAの占有は継続していることになり、取得時効は進行する。

3 誤り。債権の消滅時効は、権利を行使できることを知った時から5年経過した時点、権利を行使できるときから10年経過した時点のいずれか早い時点で完成する(166条1項)。

この場合、「Bが自分の父親が死亡したときに代金を支払う」というのは不確定期限であり、Bの父の死が期限となるから、Aの代金請求権は、期限の到来(Bの父親の死)を知ってから5年または期限の到来から10年のうちのいずれか早い時点の経過により時効で消滅する。

4 正しい。本肢のように前占有者の占有期間を合わせて主張する場合には前占有の瑕疵(悪意又は有過失)も承継する(187条2項)。従って、C自身は善意無過失であるが前占有者Aの占有期間を合算する場合には、Aの占有の瑕疵(悪意)を承継するから、時効期間は20年間となる(162条)。