【問】 Aは、Bから建物を贈与(負担なし)する旨の意思表示を受け、これを承諾したが、まだBからAに対する建物の引き渡し及び所有権の移転登記はされていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
1 贈与が書面によるものである場合で、Bが建物の所有権移転登記に応じないとき、Aは、Bに対して当該登記を求める訴えを裁判所に提起することができる。
2 贈与契約締結後に、本件建物にシロアリの被害のあることが判明したが、そのシロアリ被害がAB間の贈与契約締結以前に発生したものである場合には、Bは、シロアリの被害による建物の減価分についてAに対し担保責任を負わない。
3 贈与が死因贈与であった場合、それが書面によるものであっても、特別の事情のない限り、Bは、後にいつでも贈与を撤回することができる。
4 贈与が書面によらない場合であっても、Aが第三者Cに対して、本件建物を売却する契約を締結した後は、Bは、本件贈与を解除することができない。
〔問〕 正 解 4
1 正しい。贈与契約が有効に成立した以上、Bは建物の所有権移転登記に応じる義務を負う。それに応じない以上、Aは、Bに対して登記を求める訴えを裁判所に提起することができる(549条)。
2 正しい。負担付贈与でない場合、贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し又は移転することを約したものと推定される(551条1項)から、贈与者は、特約がない限り、贈与の目的物を贈与契約締結時点の状態で引渡せばよく、それ以前から存在する欠陥等については責任を負わない。
3 正しい。死因贈与の場合、その性質に反しない限り遺贈に関する規定が準用される(554条)。したがって、死因贈与が書面により行われた場合でも、遺贈の撤回に準じて、Bはいつでも死因贈与を撤回することができる。
4 誤り。書面によらない贈与は、履行の終わらない部分については、各当事者がいつでも解除することができる(550条)。贈与契約は、原則として片務契約であり、本肢の場合は債務を負うのはBのみである。従って、Aの行為は債務の履行には当らないため、AがCに建物を売却する契約をしても、履行が終わったとはいえず、Bはなお本件贈与を解除することができる。