【問】 A所有の建物につき、AはBに対して売却(代金2,000万円)の申込みをした。この場合、民法の規定及び判例補修が不可能なによれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
1 Aの申込みに対してBが承諾した後Aが建物をBに引き渡す前に当該建物の一部が地震により損傷したときは、Bは、Aに対しその補修を請求することはできない。
2 AB間の売買契約が成立し、AからBへの所有権移転登記後、引渡し期日が過ぎ、かつBが代金を提供したのに、Aが引渡しをしないでいたところ、当該建物が第三者の放火によって全焼した場合、Bは、当該売買契約を解除することができない。
3 Aが承諾期間を定めて申込みをした場合、Bの承諾の通知が承諾期間内にAに到達すれば、Aの申込みの撤回の通知がその前にBに到達していたとしても、AB間に有効に契約が成立する。
4 Aの申込みに対してBが承諾の通知を発信した後、その到達前にAが死亡した場合には、AB間には契約は成立しない。
〔問〕 正 解 3
1 誤り。売買の売主が引渡した目的物が、品質、種類、数量、権利内容に関し、契約内容に適合しない場合には、買主は売主の担保責任として①追完請求(補修、代替品の納品等・562条)、②代金減額請求(563条)、③損害賠償請求(564条,415条)、④契約解除(564条,541条)を行うことができるが、これらは③を除き、売主の責めに帰すべき事由を要しない(無過失責任)。よって、BはAに対して建物の補修を請求できる。
2 誤り。売主の引渡債務が履行遅滞となっている場合には、例え建物が不可抗力等で滅失した場合でも、売主の責めに帰すべき事由による履行不能とみなされる(413条の2・1項)。よって、Bは履行不能を理由として売買契約を解除できる。
3 正しい。承諾期間を定めてした申込みは撤回できないが、承諾期間内に承諾の通知受けなかったときは,その効力を失う(523条)。よって、承諾の通知が承諾期間内に到達していれば、申込みの効力は存続しているから、契約は成立する。
4 誤り。申込みの意思表示をした後に申込者が死亡しても、原則として申込みは効力を失わない(97条3項)が、相手方が承諾の通知を発する前にそのことを知ったときは申込みは効力を失う(526条)。本肢でAが死亡したのはBの承諾後であるから、申込みは効力を失わず、契約は成立する。