営業保証金制度は、供託する額も高額となります。そこで、集団的保証により、宅建業者の負担を軽くしようとする目的で保証協会加入制度が設けられています。保証協会制度は、宅建業者が保証協会に一定の金額を納めて、保証協会がそれを一つの供託所に供託するシステムです。

1.弁済業務制度 

      

弁済業務保証金

とことん覚える!重要度A

(1) 弁済業務保証金の分担金は保証協会の社員になろうとする宅建業者が、保証協会に加入しようとする日までに必ず金銭納付しなければならない。
★注1.社員が協会に納付する分担金は、金銭です。分担金を金銭で受けとった協会は、国債等にして供託できる。国債等の配当金・利息等は、協会で準備金として積み立てる。(弁済業務保証金準備金
★注2.弁済業務保証金準備金の額が一定額を超える場合は、宅地建物取引業保証協会は、その業務の実施に要する費用に充て、又は宅地建物取引業の健全な発達に寄与する事業に出捐するため、国土交通大臣の承認を受けて、その超過額の弁済業務保証金準備金を取りくずすことができる
(2) 弁済業務保証金分担金の額は、主たる事務所につき60万円、その他の事務所につき事務所ごとに30万円の割合による合計額である。
(3) 1つの保証協会の社員である者は、他の保証協会の社員になることはできない。
(4) 弁済業務保証金は、保証協会が、分担金と同額を、分担金納付から1週間以内に法務大臣および国土交通大臣の定める供託所に供託する
(5) 供託は金銭のみならず、有価証券でもすることができること等は、営業保証金の供託と同じである。
(6) 保証協会は、供託書の写しを添えて社員の免許権者に供託した旨の届出をしなければならない。
(7) 保証協会の社員が、新たに事務所を設置した場合は、その日から2週間以内に弁済業務保証金分担金を保証協会に納付しなければならず、この期間内に納付をしないときには宅建業者は保証協会の社員たる地位を失う
※ 保証協会は、分担金の納付があった日から1週間以内に弁済業務保証金を供託し、免許権者に供託した旨を届け出なければならない

2.弁済業務保証金の還付

    

弁済業務保証金の還付

とことん覚える!重要度A】 

(1) 図中①の一般消費者が、弁済業務保証金から還付を受けるためには、宅建業者と取引した者が取引により生じた債権を有していることが必要である(営業保証金と同じ)。
(2) ここでいう「取引」には、保証協会の社員が社員となる前にしたものも含まれる。
※ 宅地建物取引業保証協会は、宅地建物取引業者が社員となる前に宅地建物取引業に関する取引によってその取引の相手方等に与えた損害についての弁済をもするものであることから、そのような宅建建物取引業者が社員として加入することにより弁済業務の円滑な運営に支障を生ずるおそれがあると認められるときは、その社員から担保の提供を求めることができることとされている。
(3) 図中⑤の還付の額は、その社員が社員でないとしたならば(社員である場合も同じ)営業保証金相当額の範囲内である
※ 例えば、270万円の弁済業務保証金分担金を納付して保証協会の社員となった者と宅地建物取引業に関し取引をした者は、その取引により債権が生じたときは4,500万円を限度として弁済業務保証金から弁済を受ける権利を有する。
弁済業務保証金から還付を受けようとする者は、保証協会の認証を受けなければならない。
※ 認証申出書には、債権発生の原因である事実、取引が成立した時期、債権の額及び、認証を申し出るに至った経緯を記載した書面等を添付しなければならない。保証協会が認証に係る事務を処理する場合には、認証申出書の受理の順序に従わなければならない。
(4) 図中⑤により弁済業務保証金から還付請求権者(取引の相手方)に還付がなされると大臣指定の供託所から国土交通大臣に通知(図中⑥)が行われ、さらに国土交通大臣は保証協会に通知(図中⑦)する。そして保証協会は、その通知を受けた日から2週間以内に還付された額に相当する弁済業務保証金を供託しなければならない(図中⑧)。
※1.社員である宅地建物取引業者は、宅地建物取引業保証協会が還付に伴う弁済業務保証金の供託を弁済業務保証金準備金でもって充てても不足する場合は、特別弁済業務保証金分担金を納付しなければならない。
※2.特別弁済業務保証金分担金の納付通知を受けた社員は、その通知を受けた日から1カ月以内に当該保証協会に納付しなければならない。
(5) 供託をした保証協会は、還付された額に相当する額(還付充当金)を保証協会に納付せよと宅建業者に通知(図中⑨)する。
(6) その通知を受けた宅建業者は、通知を受けた日から2週間以内に還付充当金を保証協会に納付必ず金銭で)しなければならない(図中⑩)。(準備金に繰り入れ)
※ 通知を受けた日から2週間以内に還付充当金を納付しないときは、宅建業者は保証協会の社員たる地位を失う

3.社員は下記の義務に違反したときは、その地位を失う。

① 弁済業務保証金分担金の納付
② 還付充当金の納付
③ 特別弁済業務保証金分担金の納付
※ 宅建業者が保証協会の社員の地位を失ったときは、その日から1週間以内に営業保証金を供託しなければならない。そして、供託した旨を、免許権者に届け出なければならない。

4.弁済業務保証金分担金の取戻し

とことん覚える!重要度A】        

⑴ 社員である宅建業者が社員でなくなったとき、社員が事務所の一部を廃止し、分担金の額が法定の額を超えることとなったときには、保証協会は供託所から弁済業務保証金を取り戻すことができ、保証協会は、取戻し金額に相当する分担金を宅建業者に返還する。
⑵ 保証協会は、社員が地位を失った場合や脱会した場合は、還付請求権者に対して、6カ月を下らない一定期間内に、保証協会の認証を受けるための申出をすべき旨を公告しなければならない。
これに対して、社員が事務所の一部を廃止し分担金の額が法定額を超過するようになった場合には、保証協会は、公告をすることなく弁済業務保証金を取り戻すことができる
取り戻し事由 公告の要否
①社員でなくなった 6ヶ月以上の期間を定めた公告が必要(保証協会がする)
②一部の事務所の廃止 不要

5.宅地建物保証協会

とことん覚える!重要度C】   

⑴ 意 義
宅地建物取引業保証協会とは、弁済業務等の一定の業務を行うべき者として、国土交通大臣が指定する民法34条の公益社団法人をいう。
⑵ 指定の基準 
国土交通大臣は、指定申請者が、①民法34条により設立された社団法人であること、②宅地建物取引業者のみを社員とするものであること、③弁済業務等について適正な計画を有するものであることその他一定の要件に該当するときに限り、指定をすることができる。
※ 保証協会は、新たに社員が加入し、または社員がその地位を失ったときは、直ちにその旨を当該社員である宅建業者が免許を受けた都道府県知事に報告しなければならない。
⑶ 業 務 業務には、必須業務と任意業務とがある。
イ.必須業務(必ずしなければならない)
① 社員の取り扱った宅地建物取引業の取引に関する苦情の解決
② 取引士その他宅地建物取引業の業務に従事し、又は従事しようとする者に対する研修
③ 社員と宅地建物取引業に関し取引した者(社員となる前に取引した者を含む)の有するその取引によって生じた債権を弁済する業務(弁済業務)

ロ.任意業務(国土交通大臣の承認を受けてできる、又業務の一部を他の者に委託できる)
① 社員である宅地建物取引業者との契約により、その業者が受領した支払金又は預り金等の返還債務を連帯して保証する業務(一般保証業務)(注1)
② 社員である宅地建物取引業者との契約により、宅地建物の売買(工事完了前の宅地建物の売買を除く)に関し、その業者に代理して手付金等を受領し、その業者が受領した手付金等を保管する事業(手付金等保管事業
③ 宅地建物取引業の健全な発達を図るため必要な業務(不動産流通近代化センターへの出捐がされている)

注1.国土交通省令で定める支払金又は預り金は、代金、交換差金、借賃、権利金、敷金その他いかなる名義をもって授受されるかを問わず、業者がその取引の対象となる宅地又は建物に関し受領する金銭。
ただし、次のものは除く。
① 受領する額が50万円未満のもの
② 保全措置が講ぜられている手付金等
③ 売主又は交換の当事者である業者が、登記以後に受領するもの
④ 報酬