独立行政法人住宅金融支援機構(以下、「機構」という)は、平成19年4月1日をもって成立し、その時に従来の住宅金融公庫は廃止となり、機構がその権利・義務を引き継ぐこととなりました。機構は、証券化支援を主たる業務とする政府全額出資の組織です。
1.機構の目的(法4条)
① 一般の金融機関による住宅の建設等に必要な資金の融通を支援するために貸付債権の譲受け等の業務を行います。
② 国民の住生活を取り巻く環境の変化に対応した良質な住宅の建設等に必要な資金の調達等に関する情報の提供その他の援助の業務を行います。
③ 一般の金融機関による融通を補完するための災害復興建築物等の建設等に必要な資金の貸付けの業務を行います。
以上の業務を行うことによって、住宅の建設等に必要な資金の円滑かつ効率的な融通を図り、もって国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的としている。
2.機構の主な業務(法13条)
とことん覚える!【重要度B】
機構は、原則として、個人向け住宅への直接融資は行いません。
機構は、住宅の建設または購入に必要な資金(当該住宅の建設又は購入に付随する行為で政令で定めるものに必要な資金を含む)の貸付けに係る一定の金融機関の貸付債権の譲受けを行う。
※ 証券化支援業務の仕組み
機構は、民間金融機関から住宅ローン債権を買い取り、そして、それを担保とする債券を発行することで長期の資金調達を行い、それによって民間金融機関が長期固定金利の住宅ローン(買取型(フラット35))を提供できるようにするしくみが証券化支援業務です。
② 融資保険業務
機構が一定の金融機関をはじめとする民間住宅ローンについて住宅融資保険法による保険を行うことにより、民間の金融機関による住宅ローン供給促進を図る。
※ 住宅ローンが焦げついたときに機構が金融機関に保険金を支払う業務。
③ 資金の調達・情報提供
機構は、住宅の建設、購入、改良若しくは移転しようとする者又は住宅の建設等に関する事業を行う者に対し、必要な資金の調達又は良質な住宅の設計若しくは建設等に関する情報の提供、相談その他の援助を行う。
④ 資金の融通の補完(直接融資業務)
民間の金融機関では対応が困難な次の融資に限り、直接の融資を行う。
イ 災害復興建築物の建設・購入、被災建築物の補修に必要な資金の貸付け
ロ 災害予防代替建築物の建設・購入、災害予防移転建築物の移転、災害予防関連工事、地震に対する安全性の向上を主たる目的とする住宅の改良に必要な資金の貸付け
ハ 合理的土地利用建築物の建設、合理的土地利用建築物で人の居住の用その他その本来の用途に供したことのないものの購入に必要な資金又はマンションの共用部分の改良に必要な資金の貸付け
ニ 子どもを育成する家庭若しくは高齢者の家庭に適した良好な居住性能及び居住環境を有する賃貸住宅・賃貸の用に供する住宅部分が大部分を占める建築物の建設に必要な資金又は当該賃貸住宅の改良に必要な資金の貸付け
ホ 高齢者の家庭に適した良好な居住性能及び居住環境を有する住宅とすることを主たる目的とする住宅の改良に必要な資金又は優良賃貸住宅とすることを主たる目的とする一定の住宅の購入に必要な資金の貸付け
※高齢者向け返済特例として、機構があらかじめ貸付を受ける者との間で一定の契約を締結し、その者が死亡した場合等に支払われる生命保険金等を債務の弁済に充当する(死亡時一括償還型融資)。なお、証券化支援業務では設けられていません。
ヘ 事業主または事業主団体等から住宅資金の貸付けを受けることができない勤労者等に対する財形住宅融資
※ 経済事情の著しい変動等の事由により、貸付を受けた者が元利金の支払いが著しく困難となった場合には、一定の貸付条件の変更または元利金の支払方法の変更をすることができるが、元利金の支払いの免除をすることはできない。
3.その他の業務
① 従来の住宅金融公庫(公庫)のときの業務を引き継いでいる業務を行う。機構が承継する公庫が貸し付けた資金に係る債権の回収が終了するまでの間は、その債権の管理及び回収を行います。
② 機構は、あらかじめ貸付けを受けた者と一定の契約を締結し、その者が死亡した場合に支払われる生命保険金を当該貸付に係る債務の弁済に充てる団体信用生命保険も、業務として行っています(証券化支援業務では設けられていません)。
4.業務の委託(法16条)
【重要度C】
機構は、法13条に規定する業務(前記2③の情報の提供等の業務を除く)のうち政令で定める業務を次の者に委託することができる。
① 一定の金融機関
② 法律に規定する債権回収会社(債権管理回収業に関する特別措置法第2条3項)
③ 地方公共団体等の一定の法人
5.業務の実施(法14条)
① 機構は、業務の実施にあたっては、一般の金融機関との適切な役割分担を図り、国民に対する住宅の建設等に必要な長期資金の融通が円滑に行われるよう努めなければならない。
② 機構は、業務の実施にあたっては、住宅の質の向上を図るために、貸付債権の譲受け、債務の保証または資金の貸付けの条件の適切な設定等の措置のほか、国・地方公共団体が行うまちづくり等の施策について協力しなければならない。
6.長期借入金・機構債権等(法19条)
機構は、その業務に必要な費用に充てるため、主務大臣(国土交通大臣及び財務大臣。以下同じ)の認可を受けて、長期借入をし、または住宅金融支援機構債券(以下、「機構債券」という)を発行することができる。
7.貸付債権の信託(法21条)
機構は、主務大臣の認可を受けて、機構債券に係る債務の担保に供するため、その貸付債権(譲り受けた債権等を含む。以下同じ)の一部を信託会社等に信託することができる。
また、信託会社等に信託し信託の受益権を譲渡することなどを予定した貸付債権のうち、住宅融資保険法に規定する保険関係が成立した貸付債権(その信託の受益権を含む)を担保とする債券等の債務の保証を行う。
8.フラット35
(1) 機構は、民間金融機関による住宅ローンの供給を支援・補完するための機関として、証券化支援を主な業務として行います。つまり、民間金融機関が住宅ローン利用者に融資をし、そのローン債権を機構が譲り受け、その貸付債権を信託会社等に信託し、証券化して、債権を一般投資家に売却する。そうすることによって機構はローンの買取り資金を調達するのです。
したがって、民間金融機関は、不良債権化の心配などをすることなく、「長期固定金利」の融資ができるようになります。証券化支援事業を利用して提供される住宅ローンを「フラット35」といいます。
(2) 証券化支援事業を利用して提供される住宅ローンの概要(フラット35(買取型))
① 融資対象となる貸付け
申込み本人または親族が居住するための、住宅の建設または新築住宅もしくは中古住宅の購入のための貸付け
② 融資対象となる住宅
a 住宅の床面積が、
・ 一戸建て住宅等は、70㎡以上(上限なし)
・ 共同住宅(マンション)は、30㎡以上(上限なし)
・ 一定の併用住宅の場合、住宅部分の床面積が2分の1以上あること(融資の対象は住宅部分)
※ 敷地の面積は問いません。
b 住宅の耐久性などについて一定の技術基準に適合する住宅
c 建設費(建設に付随して取得した土地の購入費も含む)、または購入価額が1億円以下の住宅(土地の購入資金のみに対する融資はなされない)
d 中古住宅においては、借入申込日において築後年数が2年を超えている住宅または既に人の住んだことのある住宅(ただし、建築確認が昭和56年5月31日以前の場合については一定の耐震評価基準に適合していること)
③ 融資金額
100万円以上8,000万円以下で、建設費又は購入価額の100%まで(全国一律、地域・規模・構造等は問わない)
④ 償還期間
a 15年以上35年以内(ただし申込本人の年齢が60歳以上の場合は10年以上)
b 完済時の年齢が80歳となるまでの年数
⑤ 融資金利
固定金利(金利は、金融機関により異なり、資金受取り時点の金利が適用される)。申込みの受付時の金利ではない。
⑥ 保証人・保証料
保証人・保証料は不要です。
⑦ 融資手数料
融資手数料は、金融機関によって異なります。ただし、繰上げ返済手数料は不要です。