5.媒介契約の規制(代理契約)
たとえば、マイホームを売却しようとするときには、宅建業者に媒介や代理を依頼して、買いたい人を探してもらいます。この契約のことを媒介(代理)契約といいます。
契約内容の書面化
【重要度A】
⑴ 宅建業者は、宅地又は建物の売買または交換の媒介契約を締結した場合は、遅滞なく下記の①~⑦の事項を記載した書面を作成し、宅建業者が自ら記名押印し、依頼者に交付しなければならない。
① 宅地建物を特定するために必要な表示
② 宅地建物を売買すべき価額又は評価額
③ 媒介契約の類型(一般・専任・専属専任)
④ 媒介契約の有効期間・解除に関する事項
⑤ 指定流通機構への登録に関する事項
※ 一般媒介契約においても指定流通機構への登録に関する事項は記載しなければならない。
⑥ 報酬に関する事項
⑦ その他国土交通省令で定める事項
a.専任媒介契約の依頼者が他の宅建業者の媒介によって契約を成立させたときの措置
b.専属専任媒介契約において、依頼者が、宅建業者が探索した相手方以外の者と売買または交換の契約をしたときの措置
c.明示型一般媒介契約において明示義務に違反した場合の措置
d.標準媒介契約約款に基づくものか否かの別
※ 指定流通機構とは、国土交通大臣の指定を受けて、専任媒介契約その他の宅地建物取引業に係る契約の目的物で宅地又は建物の登録業務及び当該登録に係る宅地又は建物についての提供等を行う民法34条の規定により設立された法人。
・売買すべき価額…売買の媒介の場合の依頼価額をいう。
・評価額…交換の媒介の場合の依頼価額をいう。
※1 媒介契約書面の作成義務は売買・交換の場合に限られているので、貸借の媒介の場合には作成・交付義務はない
※2 媒介契約書への記名押印は、宅地建物取引業者がしなければならない。取引士の記名押印ではない!
⑵ 媒介契約の3つの契約型式のうち、どの契約を締結するかについては、依頼者が選択できることとされている。
② 専任媒介契約とは、依頼した宅地建物取引業者以外には重ねて媒介・代理を依頼することを禁止する媒介契約をいう。
③ 専属専任媒介契約とは、依頼した宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買・交換の契約を締結することができない旨の特約を含む専任媒介契約をいう。したがって、専属専任媒介契約を締結した依頼者は、自ら売買・交換の相手方を見つけてその者と契約することもできないこととなる。
⑶ 価額の根拠の明示…宅地建物取引業者は、上記の売買すべき価額又は評価額について意見を述べる場合には、その根拠を明らかにしなければならない(同法34条の2第2項)。
※1.価額について意見を述べるときは、依頼者の請求の有無問わず、また依頼価額の高低にかかわらず根拠を明示しなければならない。
※2.根拠の明示は取引士以外の者でもよく、口頭でもよい。
※3.根拠は、同種の取引事例等、価格査定マニュアルにより合理的な説明がつくものであることが必要。
⑷ 専任媒介契約の規則の特例
① 有効期間の制限…専任媒介契約の有効期間は3月を超えることはできず、これより長い期間を定めても、その期間は3月とされる。また期間を定めなかったときは、3月とされる。また、有効期間は、依頼者の申出により、更新できるが、更新の時から3月を超えることができない。
② 指定流通機構への依頼物件の登録…宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、休業日数を除き7日以内(専属専任媒介契約にあっては5日以内)に当該媒介契約に係る宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額・評価額、都市計画法等の法令上の制限で主要なもの及び専属専任媒介契約であるときはその旨を、指定流通機構に登録しなければならない。
③ 業務処理状況の報告義務…宅地建物取引業者は、依頼者に対して、業務の処理状況を専任媒介契約にあっては、2週間に1回以上(専属専任媒介契約にあっては1週間に1回以上)報告しなければならない。
※ 上記①~③に反する特約は、無効である。
● ポイント
1.売買価額または評価額について、業者が意見を述べるときは、その根拠を示さなければならない。根拠の明示は、専任、一般の媒介のいずれかを問わない。したがって、明示義務のない一般媒介でも根拠を示さなければならない。
2.国土交通大臣の定めた「標準媒介契約約款」は、専任のもの、専属専任のもの、一般のものができていて、通達で特別な事情のない限りこれを使うようにと指示している。この約款に基づくときは、「……約款」に基づく契約であると明示し、基づかないときは「……約款」に基づかない契約であると明示する。
※ 標準媒介契約約款の使用は強制されない。
3.登録をした宅建業者は、指定流通機構が発行する当該登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければならない。
4.登録をした宅建業者は、当該登録に係わる売買・交換の契約が成立したときは①登録番号、②取引価額、③契約成立の年月日について、遅滞なく、その旨を指定流通機構に通知しなければならない。
※ 通知を怠った場合は、指示処分を受けることがある。
5.媒介契約期間内に売買契約が成立しなかった場合の措置として当事者の合意の価額によりその物件を宅建業者が買受ける旨の特約は許される。
6.専任媒介と専属専任媒介の違いは、専任の場合は、依頼者が、自ら発見した相手方(たとえば、友人、知人、親戚など)との契約は禁止していないが、専属専任になると、依頼者が自ら発見した相手方との契約も禁止しているので、すべて業者の媒介によって契約を締結することになる。
7.契約の当初、予め有効期間内に成約がないときは、この契約は自動的に更新するものとするなどとの約定をしていても無効になる。専任、専属専任の場合は、依頼者の申出によって更新できる。
8.依頼者の申出により更新することは何回でも差し支えない。ただし、業者側が承諾するか否かは自由である。
9.専任媒介の場合、業務処理状況を3週間に1回以上報告すると特約しても、その特約は無効で、専任の場合は、2週間に1回以上の報告義務、専属専任の場合は、1週間に1回以上の報告義務を負う。