⑴ 原則としては業者は自ら売主となる宅地建物の売買契約において、売主としての瑕疵担保責任については民法で定める原則より買主に不利な特約をしてはならない(40条1項)。
※ 業者間の取引には適用しない

※ 民法の原則では売買の目的物に隠れたる瑕疵があるときは、善意(善意無過失)の買主はその瑕疵を発見したときから1年以内に損害賠償の請求ができ、またその瑕疵のために売買の目的が達成できないときは契約の解除もできる(民法566条・570条)。

⑵ 例外として売主が瑕疵担保責任を負うべき期間については、目的物の引渡しの日から2年以上の期間を定め、定めた期間内で責任を負うという特約は、それが民法の原則よりも買主に不利なものであっても定めることができる。(宅地建物取引業法40条1項)

⑶ 買主側に不利な特約は無効
1.例えば損害賠償の請求はできるが契約解除には応じられないとか、瑕疵による損害賠償額に制限を設けるとか、目的物の一部についてしか責任を負わないという特約は全て無効
※ 「悪意の買主は売主に対し瑕疵担保責任の追求ができない」旨の特約は有効である
2.売主側の無過失責任であり、業者は過失の有無にかかわらず瑕疵担保責任を負わなければならない。
3.担保責任期間を「目的物の引渡しの日から2年未満」とする特約は無効となり、民法の定める原則に従って売主は「買主が瑕疵を発見したときから1年間」担保責任を負うこととなる。
「担保責任を負う期間は買主が瑕疵を発見した時から1年半とする」旨の特約は有効である。

● 新築住宅については、住宅の品質確保の促進等に関する法律により瑕疵担保責任が強化されています。売主(請負人も同じ)は、住宅の構造耐力上主要な部分又は雨水の侵入を防止する部分、すなわち基礎、柱、はり、小屋組、屋根、外壁等について、買主に引き渡した時から10年間、瑕疵担保責任を負わなければならず、これに反し買主に不利な特約は無効とされます。また、特約を結べば、責任を負うべき期間は、引渡しのときから20年まで伸長できます

● 特定住宅瑕疵担保履行確保法(以下、履行確保法)
新築住宅の請負業者や販売業者が負う住宅の瑕疵担保責任は、民法、宅建業法、住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)に規定がありますが、業者が倒産等し、資力がなければ買主等を保護することができません。このようなことを未然に防ぐため、品確法による新築住宅に関する10年間の瑕疵担保責任の履行を確保するため履行確保法が制定されました(平成21年10月1日施行)。

⑴ 新築住宅の請負業者や販売業者(宅建業者が売主)が新築住宅を引き渡す場合には、下記aまたはb(ab併用可)の資力確保措置が義務付けられました。
a 住宅瑕疵担保保証金の供託(住宅供給戸数に応じて算定された金額の金銭等を主たる事務所の最寄りの供託所に供託する)
b 住宅瑕疵担保責任保険契約の締結(国土交通大臣が指定する住宅瑕疵担保責任保険法人との間で、瑕疵が判明した場合に保険金を支払うことを約した保険契約を締結する)
※ 尚、新築住宅の買主や注文者が宅建業者である場合には、資力確保措置の義務付けは適用されません

(イ) この法律において「新築住宅」とは、新たに建築された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して一年を経過したものを除く)をいう。
※ 引渡しが平成21年10月1日以降のもので戸建て住宅分譲マンション賃貸住宅等の新築住宅が対象となります。
(ロ) 対象住宅の範囲は「構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分」です。
(ハ) 新築住宅請負業者又は宅建業者は、年2回の基準日(毎年3月31日及び9月30日)から3週間以内に、供託や保険契約の締結状況を免許権者(国土交通大臣又は都道府県知事)に届け出なければならない。
※ 届出をしない場合には、原則として基準日の翌日から50日を経過した日以降新たに請負契約や売買契約を締結することができません。これに違反して契約を締結したときは、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金または併科に処せられる。
届出を怠った場合又は虚偽の届出をしたときは50万円以下の罰金

⑵ 宅地建物取引業者による供託所の所在地等に関する説明(15条)
供託宅地建物取引業者は、自ら売主となる新築住宅の買主に対し、当該新築住宅の売買契約を締結するまでに、その住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている供託所の所在地その他住宅販売瑕疵担保保証金に関し国土交通省令で定める事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
⑶ 帳簿の保存期間
宅建業者は業務に関する帳簿を各事業年度末日に閉鎖し、閉鎖後5年間(当該宅建業者が自ら売主となる新築住宅に係るものにあっては、10年間)、当該帳簿を保存しなければならない。