【重要度C】

意義及び取得

(1) 占有権とは、占有という事実状態そのものを保護する権利であり、本権の有無を問わずに認められる物権である。
※ 本権とは、占有を正当なものにする物権であり、所有権・地上権等のこと。
(2)占有権は、自己のためにする意思をもって、物を所持することによって取得する(180条)。

理解

たとえば、Aの所有する土地を何の権限もないBが勝手に占有している場合でも、Bが占有しているという事実さえあれば、Bは土地の占有権を有します。
ただし、Bの占有権が認められても、占有すべき権利まで認められるものではありません。
占有すべき権利とは、所有権(本権)などによって占有が許される権利です。

占 有 訴(そ) 権(けん)

(1)占有回収の訴え
上の例で、Bに土地を奪われたAは、所有権(本権)に基づく訴えと、占有権に基づく訴え(占有回収の訴え)の両方を起こすことができます。また、Bの占有がさらにCに奪われた場合、Bにも占有権がありますので、BはCに対して土地の占有を返せと訴え(占有回収の訴え)を起こすことができるのです。ただし、善意の特定承継人(Bから土地を買った善意のC)には訴えを提起することはできません。
※1.占有回収の訴えは、奪われたときから1年以内に行使する必要があります。
※2.占有を奪われた場合とは、強取や盗取された場合であり、詐取された場合は含まれない
(2)占有保持の訴え
占有が妨害されたときは、妨害の除去と損害賠償の請求ができる。
※ 住んでいる土地に、隣地のがけが崩れ土砂が流入してきた場合等がその例です。
(3)占有保全の訴え
占有が妨害されるおそれがある場合は、その妨害の予防または損害賠償の担保を請求できる。
※ 隣地のがけが崩れて土砂が流入するおそれがある場合に、その防護策を講じてもらうため又は損害が発生したときのためにそれを担保するものを求めるために起こす訴えです。よって、妨害の予防請求と損害賠償の担保請求は、どちらか一つだけ認められることに注意して下さい。