【問】 AがBに対し、A所有の建物を売り渡し、所有権移転登記を行ったが、まだ建物の引渡しはしていない場合で、代金の支払いと引換えに建物を引き渡す旨の約定があるときに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1  代金の支払い及び建物の引渡し前に、その建物が地震によって全壊したときは、Bは履行不能を理由とする売買契約の解除をすることも、Aからの代金の請求を拒むこともできない。

2 代金の支払い及び建物の引渡し前に、その建物の一部が地震によって損壊したときは、 Bは一部の履行不能を理由とする売買契約の一部解除をすることも、損壊部分に応じた代金の減額を請求することもできない。

3  Aが自己の費用で建物の内装改修工事を行って引き渡すと約束していた場合で、当該工事着手前にBの責に帰すべき事由に基づいて建物が全焼したときは、Bは売買代金の支払いを拒むことはできないが、Aは、内装改修工事費相当額をBに対して償還しなければならない。

4  Bが代金の支払いを終え、建物の引渡しを求めたのにAが応じないでいる場合でも、建物が地震で全壊したときは、Bは、契約を解除して代金の返還を請求することができない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 3

1 誤り。当事者双方の責めに帰することができない事由により債務を履行することができないときは、債権者は、自己が負担する債務の履行を拒むことができる(536条1項)。また、債務の履行不能を理由として契約を解除することもできる(542条1項1号)。

よって、履行不能となった建物引渡債務の債権者(買主)は、自己の負担する代金支払債務の履行を拒むこともできるし、契約を解除することもできる。2020年改正

2 誤り。目的物の一部損壊の場合、買主は、債務の一部の履行部不能を理由として不能部分に応じた契約の一部を解除することができ、残存部分のみでは契約の目的を達することができない場合には、契約全部の解除をすることもできる(542条1項3号、同条2項1号)。 また、この場合買主は、売主の担保責任として、履行の追完請求(562条)又は履行不能な部分に応じた代金の減額(563条)を請求することもできる。2020年改正

3 正しい。債権者(買主)の責に帰すべき事由により債務(建物引渡債務)の履行が不可能となった場合には、債権者(買主)は自己の負担する債務(代金支払債務)の履行を拒むことはできない、債務者(売主)は債務を免れたことによって利益を得たときは、その利益を買主に返還しなければならない(民法536条2項)。2020年改正

4 誤り。この場合の売主は履行遅滞の状態にあり、履行遅滞中に不可抗力で建物が滅失した場合には、売主の責に帰すべき履行不能と扱う(413条の2)。よって買主は売主の債務不履行に基づき、契約を解除して代金の返還を請求できる。