【問】 Aは、Bに対し金銭債権を有しているが、支払期日を過ぎてもBが支払いをしないので、消滅時効が完成する前に、Bに対して、支払いを求める訴えを提起した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

1 AB間の合意で「消滅時効の期間を延長する」旨の特約は無効である。

2 訴えの提起前6月以内に、AがBに債務の履行の催告をした場合、時効が更新されるのは、催告をしたときである。

3 Aが訴えを取り下げた場合、Aの訴え提起による時効完成猶予の効果は、Aがその取り下げをした日に消滅する。

4 BがAに対する債権を有する場合において、その債権が既に時効により消滅しているときは、その時効完成前にAの金銭債権と相殺し得る状態にあったとしても、Bは相殺することはできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 1

1 正しい。時効の完成を困難にする特約は原則として無効である。時効期間を当事者で延長する旨の特約は、時効利益をあらかじめ放棄させることになり、無効となる(146条)。

2 誤り。催告後6月以内に裁判上の請求を行った場合、時効が更新されるのは、権利の存在を確定した勝訴判決や和解等により、裁判上の請求が終了した時点である(147条2項)。

3 誤り。Aが訴えを取り下げた場合、訴え提起による時効の完成猶予の効果は、取下げ後6か月経過により消滅する(147条1項)。取下げ時点で消滅するのではない。

4 誤り。時効によって消滅した債権がその消滅する前に相殺適状にあれば、相殺することができる(508条)。