【問】 Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む)についてBから代理権を授与されている場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aが、Bの名を示さずCと売買契約を締結した場合には、Cが、売主はBであることを知っていても、売買契約はAC間で成立する。

2 Aが、Bから買主Dとの間の売買契約の締結を委託され、Bを代理してDとの売買契約を締結するに際し、Dから虚偽の事実を告げられた場合でも、Bがその事情を知っていた場合には、BからDに対する詐欺による取消はできない。

3 Aが、買主を探索中、台風によって破損した建物の一部を、Bに無断で第三者に修繕させた場合、Bには修繕代金を負担する義務はない。

4 Aは、急病のためやむを得ない事情があっても、Bの承諾がなければ、さらにEを代理人として選任しBの代理をさせることはできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 2

1 誤り。代理人(A)が本人(B)のためにする(Bの代理人である)ことを示さずCと売買契約を締結したときは、原則として売買契約はAC間で成立するが、CがAはBの代理人であることを知り又は知ることができた場合には、Aの行為が代理行為となり、BC間で契約が成立する(100条)。

2 正しい。本人から特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人の指図によって代理行為をしたか否かにかかわらず、本人が知っている事情について、代理人が知らなかったということを主張できない(101条3項)。本肢は、Bがその所有地の買主Dへの売却という特定の法律行為をAに委託した場合であるから、Dから告げられた事実が虚偽であることをAが知らなかった場合でも、本人Aが知っている以上、詐欺によってだまされたことにはならず、詐欺による取消はできない。

3 誤り。代理人は、保存行為についての代理権も有しているので、Bの承諾を得ることなく、Bに代理して保存行為である建物の修繕契約を締結することができ、その修繕契約の効果は本人Bに帰属する。よって、修繕費用は修繕契約の当事者となるBが負担する。

4 誤り。任意代理人は、原則として復代理人を選任することができないが、やむを得ない事情があるときや本人の承諾を得たときは、例外的に復代理人を選任できる(104条)。