【問】 次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 被保佐人Bが、保佐人の同意を得ずにAから金銭を借り受け、その後にBについての補佐開始の審判の取消しがなされた場合において、BがAに対して新たに担保を提供したときは、追認をしたものとみなされる。
2 AがBから何ら代理権を与えられていないのに、Bの代理人と称してB所有の不動産をCに売却する契約を締結した場合において、CはAに代理権がないことを知っていたときでもBに対して追認の催告をすることができるが、Bが催告期間内に確答しなかった場合、BはAの行為を追認したものとみなされる。
3 Aの詐欺により、BがAから旧式乗用自動車を高額で買い受けた場合において、BがAの詐欺に気付かないまま、当該自動車を他人に譲渡したときは、Bは当該契約を追認したものとみなされる。
4 BがAからA所有の土地を売却する代理権を与えられ、Aの代理人として、A所有の土地をCに売り渡す契約を締結したが、Bが当初から、Cから売買代金を受領して持ち逃げする目的のもとにCと契約した場合であっても、Aから与えられた代理権の範囲内の行為である以上、売買契約は有効である。
〔問〕 正 解 1
1 正しい。追認したものとみなされる法定追認の成立は、追認が可能となった時以降でなければならず(125条)、追認が可能な時とは、取消原因が消滅しかつ取消が可能なことを認識した時以降である(124条1項)。本肢は被保佐人が保佐開始の審判を取り消されて能力者となった(追認が可能となった)時以降であり、新たに担保を提供したものであるから、追認があったものとみなされる(同条4号)。
2 誤り。無権代理人と取引した相手方は、無権代理につき悪意であっても本人に対して追認の催告をすることができるが、その催告期間内に本人から確答がないときは、追認を拒絶したものとみなされる(114条)。
3 誤り。BはAの詐欺に気付いておらず、いまだ追認可能な状態にないので、当該自動車を他人に譲渡する行為が法定追認とみなされることはない(本問肢1解説参照)。
4 誤り。代理人が、与えられた代理権の範囲内で代理行為をした場合、代理行為は有効となるのが原則であるが、本肢のように、代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理行為をした場合において、相手方がその代理人の目的を知り又は知ることができたときは、代理人の行為は、無権代理行為となる(107条)。本肢では、相手方CがBの意図を知っていたかどうか、及び知ることができたかどうか、いずれも定かではない以上、Bの行為が無権代理行為となる可能性もあるため、契約は必ずしも有効とはいえない。