【問】 Aが、A所有の不動産の売買をBに対して委任する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、A及びBは宅地建物取引業者ではないものとする。

1 不動産のような高価な財産の売買を委任する場合には、AはBに対して委任状を交付しないと、委任契約は成立しない。

2 Bは、委任契約をする際、有償の合意をしない限り、報酬の請求をすることができないが、委任事務のために使った費用とその利息は、Aに請求することができる。

3 Bが当該物件の価格の調査など善良なる管理者の注意義務を怠ったため、不動産売買についてAに損害が生じたとしても、報酬の合意をしていない以上、AはBに対して賠償の請求をすることができない。

4 委任はいつでも解除することができるが、有償の合意があり、売買契約成立寸前にAが理由なく解除したためにBが報酬を得ることできなくなったときは、AはBに対して損害を賠償しなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 2

1 誤り。委任契約は諾成契約であり(643条)、要式契約ではない。委任状の交付がなくても成立する。

2 正しい。委任契約は原則として無償であるが、委任事務のために使った費用とその利息は、委任者に請求することができる(650条1項)。

3 誤り。有償(報酬の支払)の合意があるか否かにかかわらず、受任者は善良なる管理者の注意義務を負う(644条)のであるから、これを怠ると、委任者は受任者に損害賠償請求ができる。

4 誤り。委任はいつでも解除することができるが、やむを得ない事由があった場合を除き、①相手方に不利な時期に委任を解除したとき、②委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したときは、相手方に生じた損害を賠償しなければならない(651条)。よって、本委任契約で受任者Bの受ける利益が報酬の受領のみである場合には、上記②の括弧書きに該当するため、賠償の対象とならない。