【問】 担保物権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 抵当権者も先取特権者も、その目的物が火災により焼失して債務者が火災保険金請求権を取得した場合には、その火災保険金請求権に物上代位することができる。

2 先取特権も質権も、債権者と債務者との間の契約により成立する。

3 留置権は動産についても不動産についても成立するのに対し、先取特権は動産については成立するが、不動産については成立しない。

4 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有する必要があるのに対し、質権者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、質物を占有する必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 1

1 正しい。抵当権者も先取特権者も、担保物件としての性質である「物上代位性」がある。

すなわち、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって目的物所有者が受けるべき金銭その他の物に対しても行使することができるのであり、火災保険金請求権にも物上代位することができる。ただし、これらの優先権を行使するためには、そのものが目的物所有者に支払われる前に債権者が自ら差押えをすることが必要である(304条)。

尚、留置権には物上代位性はない。

2 誤り。質権は、質権者と質権設定者との間の質権設定契約により成立するが、先取特権は、民法その他の法律の規定によって発生する法定担保物権である(303条)。

3 誤り。留置権は動産、不動産の区別なく成立する(295条)。また、先取特権についても、動産だけでなく不動産についても成立する(325条)。

4 誤り。留置権については、留置権者の目的物占有にかかる管理義務について善良な管理者の注意義務を定めており、この規定は質権についても準用されている(298条、350条)。