【問】 Aは、Bから建物を賃借し、Bに3,000万円の敷金を預託した。その後、Aは、Bの承諾を得て、この敷金返還請求権につき、Cからの借入金債務を担保するために、Cのために適法に質権を設定した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

1 Cは、Bの承諾が書面によるものであれば、確定日付を得ていなくても、この質権設定を、B以外の第三者に対しても対抗することができる。

2 CのAに対する利息請求権は、常に満期となった最後の2年分についてのみ、この質権の被担保債権となる。

3 CのAに対する債権の弁済期の前に、この敷金返還請求権の弁済期が到来した場合は、Cは、Bに対し、当該敷金を供託するよう請求できる。

4 CのAに対する債権の弁済期が到来した場合、Cは、Bに対し、Bがこの質権設定を承諾したことを根拠に、この敷金返還請求権の弁済期の前に、当該敷金を直ちにCに交付するよう請求できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 3

1 誤り。本肢は、賃借人Aが賃貸人Bに対する敷金返還請求権をCからの借入金債務の担保として質権(権利質)を設定した事例である。この場合、権利質の対抗要件は、担保の目的である敷金返還請求権をCに債権譲渡するのと同じ通知又は承諾であり、敷金返還請求権の債務者(本肢では賃貸人B)以外の第三者に対抗するには、確定日付のある通知又は承諾を必要とする(364条・467条2項)。

2 誤り。質権は、抵当権のように利息について満期となった最後の2年分についてのみ担保される制限はない(346条)。

3 正しい。質権が設定されている債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は第三債務者Bに、その弁済金額を供託させることができる(366条3項)。

4 誤り。敷金返還請求権に質権が設定されていても、敷金返還請求権の弁済期(賃貸借契約終了後の明渡完了時)到来前に支払いを請求することはできない。