【問】 成年Aには将来相続人となるB及びC(いずれも法定相続分は2分の1)がいる。Aが所有している甲土地の処分に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況になった場合、B及びCはAの法定代理人となり甲土地を第三者に売却することができる。

2 Aが「相続財産全部をBに相続させる」旨の有効な遺言をして死亡した場合、BがAの配偶者でCがAの子であるときはCには相続財産の4分の1の遺留分があるのに対し、B及びCがAの兄弟であるときはCには遺留分がない。

3 Aが「甲土地全部をBに相続させる」旨の有効な遺言をして死亡し、甲土地以外の相続財産についての遺産分割協議の成立前にBがCの同意なく甲土地を第三者Dに売却した場合、特段の事情がない限り、CはBD間の売買契約を無権代理行為に準じて取り消すことができる。

4 Aが遺言なく死亡し、B及びCの協議により甲土地をBが取得する旨の遺産分割協議を有効に成立させた場合には、後になってB及びCの合意があっても、甲土地をCが取得する旨の遺産分割協議を成立させることはできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 2

1 誤り。人が事理弁識能力(判断能力)を欠く状況となった場合には、本人その他の関係者の申立てに基づいて、家庭裁判所が後見開始の審判をするとともに成年後見人を選任する(843条)。成年後見人は家庭裁判所が選任するのであり、推定相続人が当然に就任するわけではない。よって、家庭裁判所から選任されない限り、当然にB及びCが法定代理人(成年後見人)となるわけではない。

2 正しい。相続財産の全部をBに相続させる遺言があっても、Cが子の場合は、法定相続分の2分の1(法定相続分2分の1×2分の1=4分の1)の遺留分を有する。

Cが兄弟姉妹の場合には遺留分はない。

3 誤り。特定遺贈を受けた相続人Bは、被相続人の死亡により直ちにその甲土地の所有権を取得する(判例)から、甲土地全部に関するBD間の売買契約は有効である。

また、無権代理行為の本人には無権代理行為の取消権はない。

4 誤り。共同相続人は、既に成立した遺産分割協議の全部又は一部を全員の合意により解除した上、あらためて遺産分割協議を成立させることができる(判例)。