【問】 Aは、建物の所有を目的としてBから土地を賃借し、建物を建築して所有しているが、その土地の借地権については登記をしていない。この場合において、その土地の所有権がBからCに移転され、所有権移転登記がなされたときに関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aが、Aの名義ではなく、Aと氏を同じくするAの長男名義で、本件建物につき保存登記をしている場合、Aは、借地権をCに対抗することができる。

2 Aが自己の名義で本件建物につき保存登記をしている場合で、BからCへの土地の所有権の移転が、当該保存登記後の差押えに基づく強制競売によるものであるとき、Aは、借地権をCに対抗することができる。

3 本件建物が火事により滅失した場合、建物を新たに築造する旨を本件土地の上の見やすい場所に掲示していれば、Aは、本件建物について登記していなかったときでも、借地権をCに対抗することができる。

4 借地権が借地借家法第22条に規定する定期借地権である場合、公正証書によって借地契約を締結していれば、Aは、本件建物について登記していなかったときでも、借地権をCに対抗することができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 2

1 誤り。借地権は、借地権自体の登記はなくても、土地上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これによって第三者に対抗することができる(10条1項)。

ただし、この場合の借地上の建物の登記名義人は、借地権者自身であることが必要であり、長男の名義では、対抗力を有しない(判例:最大判昭41.4.27)。

2 正しい。借地上の建物の保存登記は対抗力を有する(上記肢1参照)。

3 誤り。建物の滅失があっても、借地権者が、①建物を特定するために必要な事項、②滅失があった日、③建物を新たに築造する旨を土地上の見やすい場所に掲示する場合には、建物滅失の2年後まで借地権は効力を有する(10条2項)が、この場合は、滅失前の建物に借地人名義の登記がされていることが必要である。

4 誤り。定期借地権か通常の借地権か、及び公正証書による契約か否かに関係なく、借地権の対抗要件は、借地権自体の登記か借地上の建物の借地権者名義の登記である。