【問】 物権変動に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Aが、Bに土地を譲渡して登記を移転した後、詐欺を理由に売買契約を取り消した場合で、Aの取消し後に、BがCにその土地を譲渡して登記を移転したとき、Aは、登記なしにCに対して土地の所有権を主張できる。
2 DとEが土地を共同相続した場合で、遺産分割前にDがその土地を自己の単独所有であるとして、D単独名義で登記し、Fに譲渡して登記を移転したとき、Eは、その法定相続分を超えない部分については、登記なしにFに対して自己の相続分を主張できる。
3 GがHに土地を譲渡した場合で、Hに登記を移転する前に、Gが死亡し、Iがその土地の特定遺贈を受け、登記の移転も受けたとき、Hは、登記なしにIに対して土地の所有権を主張できる。
4 Jが、K所有の土地を占有し取得時効期間を経過した場合で、時効の完成後に、Kがその土地をLに譲渡して登記を移転したとき、Jは、登記なしにLに対して当該時効による土地の取得を主張できる。
〔問〕 正 解 2
1 誤り。Aが詐欺を理由としてAB間の売買契約を取り消した後にBがCにその土地を譲渡した場合、Cは「取消後の第三者」であるから、AとCは対抗関係となる。よって、その優劣は登記の先後で決するため、本肢では登記を備えたCが優先する。
2 正しい。共同相続人が、遺贈、遺残分割その他の原因により、法定相続分を超える相続分を取得する場合には、「法定相続分を超える部分」については、登記その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗できない(899条の2)が、逆に言えば「法定相続分を超えない部分」については、対抗要件なくして第三者に対抗できることになる。よって、本肢の場合でも、Eはその法定相続分を超えない部分については、登記がなくても第三者Fに主張することができる。
3 誤り。相続と異なり、特定遺贈を受けたIは、物権変動につき対抗要件を必要とする「第三者」に当たる。よって、Hは所有権移転等を備えない限り、「第三者I」に対して、土地の所有権を主張することができない。
4 誤り。本肢のLは、Jの取得時効完成後に旧所有者Kから所有権を取得した者、つまり「時効完成後の第三者」に当るので、JとLは対抗関係となる。よって、その優劣は登記の先後によるため、本肢では、登記を備えていないJはLに対抗できない。