【問】 Aは、Bの代理人として、Bの所有地をCに売却した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

1 Aが未成年者であって、法定代理人の同意を得ないで売買契約を締結した場合、BはAに代理権を与えていても、その売買契約を取り消すことができる。

2 BがAに抵当権設定の代理権しか与えていなかったにかかわらず、Aが売買契約を締結した場合、BはCが善意無過失であっても、その売買契約を取り消すことができる。

3 Aに代理権がないにかかわらず、AがBの代理人と偽って売買契約を締結した場合、Bの追認により契約は有効となるが、その追認はCに対して直接行うことを要し、Aに対して行ったときは、Cがその事実を知ったとしても、契約の効力を生じない。

4 Aが代理権を与えられた後売買契約締結前に破産手続開始の決定を受けた場合、Aの代理権は消滅するが、Aの代理権が消滅しても、Cが善意無過失であれば、Bはその売買契約に基づく責任を負わなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 4

1 誤り。制限行為能力者が代理人としてした行為は、制限行為能力者であることを理由としては取り消すことができない(102条)。よって、代理人が未成年者の場合、未成年であることを理由として未成年者がした代理行為を取り消すことはできない。

2 誤り。代理人が代理権の範囲を超えた行為を行った場合でも、相手方が代理人に権限があると信じるについて正当理由がある(善意無過失)場合、表見代理が成立する。したがって、本人は代理人のした行為について責任を負わなければならない(110条)。

3 誤り。追認は、原則として相手方に対して行うが、無権代理人に対して行った場合でも相手方がその事実を知ったときは、追認が相手方にあったと同様の法律効果が発生する(113条2項)。したがって、契約は初めに遡って有効となる。

4 正しい。代理人が破産宣告を受けた場合、代理権は消滅するので、破産宣告後に代理人が相手方との間で締結した売買契約は無権代理行為となるが、相手方が善意無過失であれば表見代理が成立し、本人は当該売買契約に基づく責任を負う(112条1項)。