転(てん)抵当(ていとう)

抵当権者はその抵当権をもって自己の債務の担保とすることができる(民375)。その対抗要件は、主たる債務者(もともとの抵当権設定者=原抵当権設定者)に対する通知またはその承諾である(法376条)。

抵当権又はその順位の譲渡及び放棄をすることができる(民375)

たとえば、同じ債務者に対してAが1番抵当権者(400万円)、Bが2番抵当権者(200万円)、Cが3番抵当権者(600万円)とし、抵当不動産が1,000万円で競売されたとします。
通常ならばAに400万円、Bに200万円、Cに400万円が配当される。

① 抵当権の譲渡

Aが自分の1番抵当権を無担保債権者D(600万円)に譲渡するとDはAの債権額(400万円)についてだけ1番抵当権をもつことになり、400万円の配当を受けることができる。Aは抵当権者でなくなるわけで配当額はゼロになる。

② 抵当権の放棄

上の例でいえば、AがDに対して抵当権を放棄すると、AとDはAがもっていた1番抵当権の額(400万円)をおのおのの債権の額の割合に応じて分けることになる。つまり、400万円を、A・Dの債権額の割合で分けるとA5分の2対D5分の3になり、Aが160万円、Dが240万円の配当を受けることになる。

③ 抵当権の順位の譲渡

抵当権の順位を譲渡するというのは、先の順位の者が後の順位の者と入れ替わることで、AがCに順位を譲渡した場合、そのままで配当を受けた場合のAの配当額(400万円)とCの配当額(600万円のうち現実にもらえる400万円)の合計800万円について、Cが自分の債権の全額(600万円)の配当を受け、残った200万円をAが配当を受けることになる。

④ 抵当権の順位の放棄

順位の放棄とは、順位の先の者が後の者のために優先的な地位を放棄することです。AがCのために順位を放棄するとAとCは同じ順位になり、競売の際に、両方の者が配当を受けられる額をそれぞれの債権額に応じて分けることになる(800万円を5分の2対5分の3で分けるから、A320万円、C480万円となる)。