【問】 Aは、Bの所有する土地を自己の所有地であると過失なく信じ、所有の意思をもって、平穏かつ公然と占有を開始した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aは占有開始後3年を経過したときにこの土地がBの所有地と知った時には、更に7年間占有を継続してもこの土地の所有権を時効取得できない。

2 Aの占有の開始から2年が経過したときに、BからAに対し、この土地から立ち退くよう裁判上の請求があり、Bが裁判で勝訴した場合、Aは占有を継続しても、この土地の所有権を時効取得することはできない。

3 Aの占有から5年が経過した時点で、Bがこの土地をCに譲渡して、登記を移転した場合、更に5年間占有を続けたAは、この土地の所有権の時効取得をCに対抗することができる。

4 この土地を6年間占有したAが死亡し、Dが相続した場合、Dはこの土地がBの所有地であることを知っていたときには、その後4年間占有を続けても、この土地の所有権を時効取得することはできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔問〕 正 解 3

1 誤り。占有の開始時に善意無過失であれば後から他人のものと知ったとしても時効期間10年に変わりはないから、その後さらに7年間占有を継続すれば時効取得できる(162条2項・判例)。

2 誤り。AによるB所有地の取得時効は、土地所有者Bから土地立ち退きの訴訟が提起された時点でその完成が猶予され、Bの勝訴が確定した時点で更新される。しかしながら、Aが土地の占有を継続する限り、時効は更新された時点から新たに進行を開始する(147条2項)ので、その時点から時効期間を経過すれば時効取得することもありうる。

3 正しい。Aの取得時効が完成すれば、Aは登記がなくても時効完成時の所有者に対しては、時効取得を対抗できる(177条・判例)。

4 誤り。相続人は、被相続人の権利義務を承継するから被相続人Aの善意無過失の占有を主張することができる(187条1項・判例)。よって時効期間は通算10年間となる。